第33話 ページ33
ぐるぐると思考を巡らせて、話題を探す。
｢‥‥‥‥海、楽しかったね｣
｢‥‥まぁな｣
‥‥‥‥。
終わったわ。
なにこいつ、わたしと話す気ないの？
ちょっとイラっとしたけど、まぁ別にいつもの事なので特に反応はしない。次だ、次。
｢‥‥そう言えば、夏祭りって行ったことなかったよね、わたし達｣
｢‥‥ねぇな｣
‥‥‥‥。
待って、キレそう。
さすがにこうなると、わたしもわたしで話す気も失せてくる。
いや、あろまのことは好きだよ。でもさ、3年間一緒にいれば嫌なところとか直して欲しいところとかあるじゃん。今それがモロに出てるわけよ。結構キレそう。これまだ付き合ってたらソッコーで食いついてたわ。
しかし今は彼女でもなんでもないので、無駄に喧嘩を吹っ掛けるのも躊躇われる。
彼女では、ないから。
｢‥‥‥‥｣
｢‥‥‥‥｣
あろまがケータイを見始めた。
ほら、これだ。
多分、今の彼女とのやり取りなんだろう。
実を言うと、お祭りの前も、海にいるときも、なんなら行きの車の中でさえ、あろまはちょくちょくケータイを気にしていた。
あんまり落ち込みたくないから見ないようにして、なるべくみんなと笑っていたけれど。
今は、あろまと2人だ。
しかも薄暗いこの場所じゃ、あろまのケータイの光が嫌でも視界に入ってしまう。
ああ、また。
｢‥‥言いたい事あんなら言えよ｣
不意に、あろまの声が、静寂を切り裂いた。
｢‥‥‥‥は？｣
｢‥‥‥‥｣
あろまは、いつのまにかじっとわたしを見ている。
その瞳から、感情は読めない。
｢‥‥言ってるよ｣
｢嘘つけ。いつもならさっきのやり取りでも気に食わねーとか言ってギャンギャン吠える癖に｣
｢吠えた覚えないし｣
｢吠えてた｣
なんだか妙に突っかかる言い方だ。
しかし耐える。
わたしはひとつ深呼吸をして、あろまから目をそらした。
｢別に言いたいことなんてないよ、今更｣
少し、突き放すように言ってみた。
視線の先には、ちらちらと星が見える、真っ黒な夜空。
｢‥‥あっそ｣
｢‥‥‥‥｣
短い返事が聞こえる。
でもなんとなく、言いたい事があるのは、あろまのほうのような気がした。
｢‥‥お前さ｣
｢‥‥‥‥ん｣
ほら、やっぱりなんかあるんだ。
わたしはあろまのほうを見ずに、その先を促す。
｢‥‥俺のこと、まだ好きか｣
どこかで、子どもの泣く声が、聞こえた。
→
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xjythtphs1213(プロフ) - こばやしさん» 返信ありがとうございます…！ いやいや、読んでて楽しめます！！eさんのフェチの話も読んだんですが、素直にキュンとしました… もうこばやしさんのセンスが大好きですﾟ(ﾟ`ω´ ﾟ)ﾟ (2017年8月22日 21時) (
レス) id: ab8a07239c (このIDを非表示/違反報告)
こばやし(プロフ) - xjythtphs1213さん» コメントありがとうございます！もったいないほどのお言葉でございます……！！作品数もそこそこありますので、無理はなさらぬよう、お楽しみ頂ければ幸いです！ありがとうございます、頑張りますっ！！ (2017年8月20日 23時) (レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)
xjythtphs1213(プロフ) - 読むのが止まらなくて、秒で読んでしまいました…！至る所で、言葉や表現にドキッとしました！とても面白かったです！こばやしさんの小説、全て見ます(*ﾟvﾟ*) (2017年8月20日 13時) (レス) id: ab8a07239c (このIDを非表示/違反報告)
こばやし(プロフ) - しにゃもん(｀・ω・´)さん» コメントありがとうございます！なんとか無事完結いたしました……笑 意外とこういった暗めのお話もお楽しみ頂けるようで安心いたしました！！次の小説も頑張ります‥‥！！(´;ω;`) (2017年8月10日 2時) (レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)
しにゃもん(｀・ω・´)(プロフ) - めちゃくちゃ面白かったです！完結お疲れ様でした！最後の方は本当に涙が止まらなかったです…！ (2017年8月4日 10時) (レス) id: 23db386b10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こばやし
| 作成日時：2017年7月25日 22時
