【あろま.ほっと】続！ちらりずむ･りたーんず

第25話(A side) ページ25

｢いいか、A｣
｢‥‥はい｣


俺は立ち上がり、パソコンのあるデスクへと移動する。
じっと俺を見つめる視線を感じながら、パソコンを立ち上げた。


｢‥‥‥‥え｣


デスクトップが表示された瞬間、またポカン顔になる。

｢‥‥あのな、まず言っておく。俺は、普通にお前のファンだ｣
｢‥‥‥‥あ、あの、｣
｢聞け｣
｢は、はい｣


デスクトップには、こいつの最新アルバムのジャケットの画像が、壁紙として設定されている。


俺が今から、どれだけお前に惚れてるかを、恥をかく覚悟で伝えてやる。



｢‥‥お前のCDは、全部買った｣
｢‥‥え！！｣
｢もちろん、今年開催予定のツアーのチケットも手に入れてる｣
｢え、え、｣
｢動画や生放送だって毎日チェックしてる。閲覧履歴を見ろ。お前しかいない｣
｢‥‥‥‥｣


動画サイトを開き、閲覧履歴のページを見れば、物の見事にAだらけだ。

もう、引かれたっていいと思った。
もはや自分だって軽く引いている。


｢お前に会えない日は、ずっとこのパソコンで、お前を見てた｣


でも、それほど俺は、毎日のように、お前に焦がれていたんだ。



｢片想いしてたのは、俺も同じだ｣



毎日頑張るお前の姿を見ると、俺も頑張ろうと思えた。
動画に映る楽しそうな姿に、何度も心が奪われた。


ヘッドフォンから流れるお前の声に、胸が締め付けられそうになるほど、会いたいと、何度も思った。



｢どんだけ俺がお前のこと好きか、これでわかったかボケナス｣
｢‥‥‥‥‥‥は、はい‥‥｣



わかれば良し。

早々にクソ恥ずかしいパソコンを閉じて、腕を組んで仁王立ちでAを見下ろす。

妙に縮こまったその肩は、ふるふると震えている。



｢‥‥‥‥ぅ、うう‥‥っ｣
｢‥‥‥‥なに泣いてんだよ｣


泣きそうだな、とは思っていた。
しかし、どんな感情かがわからず、手を差し伸べる事が出来ない。

引いたか？

両想いになった途端、冷めたのか？

それとも、怖いか？

やがて、ぽろりぽろりと零れる涙を、自分の手ですくい上げるAが、息を吸い込んだ。


｢‥‥っ、あ、あろまさん、｣
｢‥‥‥‥ん｣




｢‥‥‥‥‥‥抱きしめて、っ‥‥｣




考えるより先に、身体が動いた。


座り込むAの前に膝をついて、そっと背中に腕を回す。

俺の肩におでこを寄せてすすり泣くAの頭を、何度も何度もすり撫でた。


｢すき‥‥すきっ‥‥あろまさんが、好き！｣


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