【あろま.ほっと】続！ちらりずむ･りたーんず

第23話(A side) ページ23

｢あ、あの‥‥どうして、ここに、｣
｢‥‥帰ってきただけだけど？｣
｢‥‥わ、わたし、自分の家に、‥‥｣
｢‥‥終電逃したくせに？｣
｢そ、それはあろまさんが！｣
｢なんだよ｣
｢う、‥‥‥‥｣

泣きそうな顔で、押し黙るA。
赤く染まった頬や耳がやけに可愛らしく見える。
ああ、だめだ。多分今日これいくわ。


｢‥‥次はどんな作戦立ててくんの？｣


わざと、聞いてみた。

自分でもわかる、口角の上がり具合。きっと意地の悪い顔をしている。だが隠しもせずに、そのまま見つめる。

｢‥‥秘密です、｣
｢‥‥色仕掛け？｣
｢そんなことしません！！｣
｢へー残念。それなら俺一発で堕ちちゃうんだけどなー｣
｢‥‥‥‥‥｣

赤い顔で睨まれた。
なにそれ全然怖くない。

｢試しに今やってみ？｣

挑発するように言ってみた。

｢‥‥そ、それは‥‥あろまさんが、わたしのこと好きになってからです！！｣

お、いつもの調子を取り戻したか。
やけに強くなった口調と、一気に伸びた背筋を見て一瞬ひるむ。
いや、いい。これでいい。

｢ほおー。好きになればお前でもそういうの出来んだ。ヘタレのくせに｣
｢へっ‥‥！ヘタレじゃないです！！やるときゃやりますっ！！｣
｢絶対無理なやつ｣
｢無理じゃないですー！！あろまさんなんてわたしの色仕掛けにかかればイチコロです！！｣
｢自信があると？｣
｢もちろんっ！｣

ふふん、と胸を張るA。どこからその自信が出てくるのか。
というかお前は今、どういう状況に立たされているのかわかっているのか？

｢ほほう。かなりのテクニックをお持ちのようで｣
｢そっ、そそそんなテクニックなんてないですけど！！きっと多分恐らく大丈夫です！！き、きっ気持ちだけはありますし！！｣
｢じゃあ仕掛けてみろよほら｣
｢だから！！それは好きになってもらってからですってば！！｣
｢もう好きだよ｣
｢ですよね！！だからそういうのはまた今度‥‥‥‥‥‥‥‥え？｣


ぴたりと、Aの動きが止まった。




｢オラ喜べ、両想いだぞ｣




追い打ちをかけるように、言ってやれば。



｢‥‥‥‥‥‥へ｣



ぽかんと口を開けて、俺を見ている。



テーブルにグラスを置き、頬杖をついてそのあほ面を見つめた。



｢もうとっくのとうに好きなんだけど｣



静まり返った部屋に、やけに響く自分の声。
少し早い心臓の音が、聞こえてしまわないか心配になるくらいには、柄にもなく、緊張していた。



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