【あろま.ほっと】続！ちらりずむ･りたーんず

第16話(A side) ページ16

｢で、どうよ？｣

隣のきっくんが、ストレッチをしながら問いかけてきた。

今は男2人、サウナである。


｢‥‥‥‥なにが｣
｢もー！さっきからそればっか！｣
｢お前が訳わかんねー聞き方するからだろ｣
｢わかってるくせに｣
｢わかんねーよ｣


こめかみから流れた汗が、顎を伝ってぽたりと腕に落ちた。
俺は腰にタオルを巻いて、じっと座っている。

壁にかかった時計をちらりと見れば、まだ3分も経っていない。


｢Aちゃんとはうまくやってる？｣
｢‥‥上手くも何も、付き合ってねーけど｣
｢でも好きなんでしょ？｣
｢‥‥好きじゃねぇ｣
｢うそだぁ｣
｢‥‥んだよ｣
｢そろそろ応えてあげないの？｣

ストレッチに飽きたのか、今度は俺と同じ体制で座り込んだ。
きっくんは身体がでかいから、横に並ぶと幾分俺が小さく見える。

‥‥応えてあげるもなにも。

｢‥‥あいつのやり方が悪い｣
｢ほらまた人のせいにして｣
｢だってそうだろ！俺は電話番号だって渡してやったのにかけてもこねーし｣
｢そう言えばいいじゃん｣
｢言ったよ。知ったようなこと言うな｣
｢全部聞いたよ｣
｢‥‥じゃあなんで｣

じっと見つめられる。

この後何を言われるかなんてわかっていた。
そりゃそうだ。自分でも散々思ったことだ。




｢ここまできて強がる必要ある？｣



ほら。



｢‥‥‥‥｣
｢‥‥なにもこんな回りくどいことしなくたって、好きって言えばいいじゃん｣
｢‥‥言おうと思えば、言える｣
｢じゃあなんで？｣

今度は俺が問いかけられた。
なんで？そんなの決まってるだろ。あいつが一番望む形で、応えてやりたいからだ。

片思いを、叶えてやりたいから。




あれ？




｢‥‥‥‥、｣
｢‥‥気付いた？｣

にやりと笑ったきっくん。


俺は、大きな勘違いに気付いた。


あいつの片思いを叶えてやれるのは、他でもない、俺自身だ。


｢あろまが動かないと、変わらないぜ？｣


肩にかけたタオルで、汗を拭うきっくん。
そうだ。確かに俺は、好きって言わせろと言った。確かにあの時は、好きって言った所で信じてもらえないと思った。

だけどもう、今は。

｢Aちゃんの努力、無駄にしてやるなよ｣
｢‥‥‥‥‥‥｣

飽きもせずくっついてきたり、飯に誘うようになったり、こうして、試行錯誤して作戦立ててみたり。


あいつはあいつなりに、必死だった。


｢‥‥‥‥暑い｣
｢‥‥ほんとそれ。出よ｣


気づけば、20分も経っている。

干からびる。


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