第7話 ページ8
最悪だ。
「‥‥‥‥うわ」
ずぶ濡れの全身を見て、はぁ、とため息を零す。
一瞬、一瞬ならいけると思ったのだ。
図書委員の用事があって、教室から移動している最中。
別の校舎にある図書室へは、1階にある渡り廊下を渡って行くのが一番近いのだが、その渡り廊下に一部分だけ、外に面した所があった。
今日の天気で雨ざらしになったその廊下を見て、一瞬怯んだのもつかの間。
別の通路もあるにはあるが、遠回りだし、ええいこのまま、なんて飛び込んだのが間違いだった。
ずるりと滑って、なんとか踏ん張って転ばずには済んだものの、咄嗟に体制を立て直したのはまさかの廊下の外。
「‥‥うう」
思い切り浴びた。
ただでさえバケツをひっくり返したようなこの雨だ。一瞬でびしょ濡れになってしまった。
なんとか図書室まではたどり着いたが、本が濡れてしまうので、まずは自分の身なりをなんとかせねば。
「‥‥(誰もいないし、いっか)」
んん、と、ニットのベストを脱ぐ。
水を含んだそれはずっしり重い。
スカートの中にしまいこんだYシャツの裾も全て引っ張り出す。タオルもないので、仕方なしにゴミ箱の上でシャツの裾をぎゅっと絞れば、ポタポタと水滴が落ちた。
靴下も脱ぐ。
素足に上履きは‥‥うーん、なんか慣れなくて気持ち悪い。しかし濡れたままでいるよりかは幾分マシかな。
石油ストーブを見つけて、こんな季節だけどこっそりつけてみた。
近くにパイプ椅子を置いて、脱いだベストと靴下を干す。
まあ、30分も干しておけば靴下くらいは乾いてくれるかな。
うん、とひとつ頷いて、振り返る。
「大丈夫?」
「ひぅっ!!!!」
扉の隙間から覗いていた顔に、声にならない悲鳴をあげた。
「‥‥ずぶ濡れじゃん」
あらら、なんて驚いたようにわたしを見ているのは、えおえおくんだった。
「えっ、‥‥えおえおくん、いたの‥‥?」
「今来た。つかどしたの、風邪ひくよ」
「あ、あの、いや、大丈夫、」
未だにばくばくと早る心臓を悟られないように、なるべく普通に話したつもりが、どもるどもる。
「なんで、ここに‥‥?」
「‥‥俺図書委員じゃないの?」
「‥‥あ、そっか」
そうだ。確か前回の図書委員の当番の時に、毎週水曜日がうちのクラスの担当だって教えてあげた気がする。
覚えてたんだ。
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とん - 尊すぎてしにました…ありがとうございます… (2020年7月24日 23時) (レス) id: 3faf487191 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 素敵な作品でした〜読んでいてキュンキュンさせていただきました!!彼の口調とか言い回しが似ていて凄いなと尊敬しました。本当に凄いです!!最近ハマったのですがこれからもっともっとハマりそうです〜!!本当に素敵な作品ありがとうございました!! (2018年9月21日 14時) (レス) id: c0eacb0216 (このIDを非表示/違反報告)
りんご豆腐二世(プロフ) - 返信ありがとございます!!これからもこばやしさんの小説を楽しみにしてます!!頑張ってください(っ`・ω・´)っ (2017年7月10日 19時) (レス) id: 9165d543dd (このIDを非表示/違反報告)
こばやし(プロフ) - りんご豆腐二世さん» コメントありがとうございます!レス遅くなり大変申し訳ありません……!学生時代に赤点を取りまくった国語ですが、ぶっちぎりで褒めて頂き大変光栄でございます!これからもキュンキュンして頂けるように頑張りますっ!!! (2017年7月10日 19時) (レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)
りんご豆腐二世(プロフ) - 初コメ失礼しますm(._.)mこばやしさんの小説は初めて読んだのですが、文章力が凄く私までキュンキュンしてしまいました!!これからも無理せず頑張ってください!!文章力がなくてすみませんm(;∇;)m (2017年6月26日 15時) (レス) id: 9165d543dd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こばやし | 作成日時:2017年5月22日 21時