第4話 ページ5
「食欲ないの?」
ぽおっとしていた目を、はっとして友香ちゃんに向ける。
「‥‥さっき、持久走だったから」
「あそっか、Aのクラスも始まったんだ」
「うん」
止まっていたお箸を動かして、お弁当のトマトをつまむ。
うん、確かに食欲はない。ちょっと頑張りすぎた。
「ほっぺた赤いよ。日に焼けたんじゃない?」
「ほんと?やだなぁ」
「肌白いのにもったいないよ。日焼け止め塗れば?」
「顔にも塗るものなの?」
「あたしめっちゃ塗りたくってるよ!」
「へぇ」
日焼けしたとき特有の火照りが、おでこや頬、腕にまで残っている。うう、もっと早く日焼け止めの存在に気付けばよかった。5月だと思って油断してた。
「ジュース買ってくるね!いちごオレだっけ?」
「あ、うん、行ってらっしゃい」
お弁当をわたしの机に広げたまま、友香ちゃんは下駄箱のほうにある自販機へと向かって行った。
ふう、と息を吐いてお箸を置く。
暑い。日に焼けた頬がぽかぽかしてたまらない。絶対痛くなるやつだ。
思わず水筒を頬に当てた。
「貸してやるよ」
不意に、隣から声が聞こえてきた。
えっ、と慌てて振り向くと。
「ん」
あろまくんが、保冷剤を差し出してこちらを見ている。
「‥‥‥‥え、わたし?」
「‥‥お前しかいないだろ」
確かに。わたしの横は窓だ。
あろまくんはえおえおくんとお弁当を食べていたようで、二人してわたしを見ている。
「弁当に入ってたやつだけど」
「ないよりマシだべ」
「あ、ありがとう‥‥」
「まっかっか」
えおえおくんに笑われて、もらった保冷剤をさっと頬に当てた。
「!」
冷たくて、声もなく驚いた。
ちょっと冷たすぎる。
すぐに離して、ポケットからハンカチを取り出す。
「そりゃ直接当てたらつめてーよな」
「ふふ、すごい顔してた」
「あ、あんまり見ないで‥‥」
ばっちり見られてたようで、笑いながらからかわれた。恥ずかしい。いろんな意味で顔が火照る。体育のあとでよかった。
あんまり男子への免疫がないわたしはとても困る。
しかも、ほぼ初めての彼らとの会話が、こんな会話だなんて。
友香ちゃん早く戻ってきて‥‥!
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とん - 尊すぎてしにました…ありがとうございます… (2020年7月24日 23時) (レス) id: 3faf487191 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 素敵な作品でした〜読んでいてキュンキュンさせていただきました!!彼の口調とか言い回しが似ていて凄いなと尊敬しました。本当に凄いです!!最近ハマったのですがこれからもっともっとハマりそうです〜!!本当に素敵な作品ありがとうございました!! (2018年9月21日 14時) (レス) id: c0eacb0216 (このIDを非表示/違反報告)
りんご豆腐二世(プロフ) - 返信ありがとございます!!これからもこばやしさんの小説を楽しみにしてます!!頑張ってください(っ`・ω・´)っ (2017年7月10日 19時) (レス) id: 9165d543dd (このIDを非表示/違反報告)
こばやし(プロフ) - りんご豆腐二世さん» コメントありがとうございます!レス遅くなり大変申し訳ありません……!学生時代に赤点を取りまくった国語ですが、ぶっちぎりで褒めて頂き大変光栄でございます!これからもキュンキュンして頂けるように頑張りますっ!!! (2017年7月10日 19時) (レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)
りんご豆腐二世(プロフ) - 初コメ失礼しますm(._.)mこばやしさんの小説は初めて読んだのですが、文章力が凄く私までキュンキュンしてしまいました!!これからも無理せず頑張ってください!!文章力がなくてすみませんm(;∇;)m (2017年6月26日 15時) (レス) id: 9165d543dd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こばやし | 作成日時:2017年5月22日 21時