【MSS.P】いちにち、いちむすすぴ

１４(FB) ページ14

『今日も遅くなるので、先に寝ててください』

FBからメッセージが来たのは、もう日付も代わる頃の、夜だった。

｢‥‥‥‥｣

今日は、きっくんと飲みに行くと言っていた。
恭しく敬語で送ってきたところを見ると、少なくとも悪いとは思ってるんだろうけど。


『わかりました』


なんとなく腹が立って、敬語で返してしまった。

深く重いため息をひとつ吐き出して、ごそごそとベッドに入る。

今日はFBとお付き合いするようになってから、何度目かの記念日だった。

最初の頃は、二人して1週間前からそわそわして、どこに行こうか何をしようかなんて浮かれていた。
それがどうだろう、記念日を重ねる毎に、そんなわくわくも薄れてきてしまって。去年は、わたしが言うまでFBはずっと忘れたままだった。

｢(‥‥まぁ、いいけど)｣

無理やりに納得して、目を閉じる。

せめて、一緒にいたかったな。









｢A！｣


突然大きな声がして、驚いて目を開けた。

｢‥‥ん‥‥FB‥‥？｣
｢起きて！Aおはよう！｣

FBの笑顔が、カーテンから漏れた光で明るく照らされている。

あれ‥‥朝か。

｢‥‥おはよ‥‥どしたの‥‥？｣
｢ほら！着替えて着替えて！｣

朝からテンション爆上がりのFBに急かされて、早々にベッドを出る。

｢‥‥いつ帰ってきたの？｣
｢さっき！きっくんちに泊まってきた！｣
｢‥‥そう｣
｢いいからほら！｣

どうやらFBは、こんな朝っぱらから出かけたいらしい。ワックスを付けて、ジャケットも着込んで、妙にキメている。

｢行こう！｣

適当に着替えると、早々に手を引かれる。
どこに連れていかれるんだろう。








あれよあれよいう間に連行され、連れてこられたのは撮影スタジオのような建物。
中に入れば、今度はにこにこと素敵な笑顔のお姉さんたちに引っ張られ、気づけば。


｢‥‥ウェディングドレス‥‥？｣


真っ白な、シルクのドレス。


｢‥‥びっくりした？｣


タキシードのFBを、困惑の目で見つめる。


｢‥‥付き合った記念日を、結婚記念日にレベルアップしようよ｣


照れたように笑う彼は、付き合った当初と変わらない。

｢‥‥お、覚えてたの‥‥？｣
｢当たり前じゃん！きっくんと2人でめちゃくちゃ悩んだんだぜ！｣
｢‥‥そういうことね｣

笑みが零れる。
まったく、この男と来たら。

｢‥‥綺麗だよ｣

笑うFBは、いつもよりかっこいい。




(指輪は今度買いに行こう！式はいつにしようか！)
(気が早いよFB‥‥)


END

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