【MSS.P】いちにち、いちむすすぴ

１２(きっくん) ページ12

収録終わり。
今日も無事終わったなぁ、なんてコーヒーを飲んでいる時だった。


｢おーいマネージャーー！！｣


自販機の前にいるわたしに、遠くから手を振るきっくんさんが廊下の奥に見えた。
渡辺さんはいま近くにいないし、わたしのことかな？

｢はーい、なんですか｣
｢ちょっと来てーーー！｣
｢えー？｣

ちょっと嫌な顔をして見たら、いいからほら！なんて手招きされて、しぶしぶ足を向けた。

きっくんさんのことだ、こうしてわたしを呼びつける時は、大体なにかよからぬ事を企んでいる時。
厨二病どころか、もはやいつも小学生のノリなんだもの。

｢はいはい、どうかしましたか｣
｢ふふん！いい？よく見てろよ？｣
｢‥‥はぁ｣

近くまで行けば、にやり、と笑ってわたしを見下ろすきっくんさん。
見てろよ、と言われたので、彼がわたしに向けている手のひらをじっと見てみる。


｢行くぞ行くぞ！せーの！｣



‥‥ぽんっ。



｢‥‥っ！｣



ぐっ、と、手のひらを握ったかと思えば。
次に開いた瞬間、小さな黄色いお花が飛び出てきた。


｢どうどう？びっくりした？？｣


子どもみたいに無邪気な笑顔で、出てきたお花を摘んでは、わたしにプレゼントするように差し出してくるきっくんさん。

わたしはぱちくり、と目を瞬かせて、その花を見る。


｢、わあ、すごい！もう一回！もう一回やってください！｣
｢ふふーん！でしょー！でもだめ！１回しかやんないよ！｣


きっくんさんは少年のように笑って、そのお花をわたしの耳の上に飾ってくれた。


｢ほら可愛い！｣
｢わ、ちょっと、｣
｢いつもありがとうマネージャー！怒った顔しか見ないけど、笑顔が一番可愛いよ！｣
｢と、突然なに言い出すんですか！｣
｢いつも言ってるよー！｣


小学生かと思ったら、今度はまたチャラ男になってしまった。
ていうか、いつも怒らせてるのはあなたでしょうが！


はぁ、とため息をつきながらも、耳元にあるお花にそっと触れて、こっそり赤くなってしまった頬を隠した。



(もう1個マジック見せてあげよっか？)
(え！見たいです！)
(これはすごいよー！)
(どんなマジックですか？)
(マネージャーが俺を好きになるマジック！)
(‥‥は、はぁ！？)
(顔真っ赤！！まだマジックかけてないよー！)
(う、うるさいですよ！)




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