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第33話(A side) ページ33

「‥‥もうやめてください」


ぽそりと、聞こえてきた呟き。


「‥‥なに」
「‥‥もう、いいです」


見つめていた目が、うるうると潤んできた。
あ、零れる。



「わたしには、ハジメちゃんがだめだから、無理矢理諦めようとしてるようにしか、見えません」



信じられないような言葉が、そいつの口から出てきて、俺は耳を疑った。


こいつ、なんて言った?


「‥‥‥‥‥‥てめぇもう1回言ってみろ」
「‥‥‥‥ハジメちゃんには、えおえおさんが、いるから、」
「おい、お前」

クソ真面目にもう1度言おうとした言葉を遮る。
思わず立ち上がって、テーブルに身を乗り出してしまった。

「ハジメはなんでもねぇっつってんのがわかんねーのか」
「口で言ってるだけかもしれないじゃないですか」
「ほんとかもしれねーだろ。なんで信じられねーんだよ」
「あろまさんだってそうです。わたしの気持ち、疑った」
「‥‥っ、」


ぶん殴られたような衝撃だった。


そうだ。


俺は、こいつが俺を疑うより先に、こいつを疑った。



開いた口が塞がらない。




「別に、ただの、一目惚れだからっ、片想いで、いいのに、」

なんで、踏み込もうとするんですか。



ぽろぽろと零れる涙をそのままに、歪めた顔で、俺を見上げるA。

無意識に後ずされば、椅子が当たってガタリと音を立てた。


ただの、一目惚れ、だから。



「‥‥‥‥もう、いい」


やっとのことで出てきた言葉は、諦め。


「お前と、向き合ってみたいと思った俺が、馬鹿だった」


次に、貶すような嫌味と。



「‥‥(‥‥好きだって、思えたのに)」



今日一番の、素直な気持ち。



肝心なことが言えないのは、俺も同じだった。


顔を見ずに、扉に向かう途中で。
後ろから、静かにすすり泣く吐息が聞こえた。


あいつは俺のことが好きで、

俺もようやく、応えようと思って、


なのに、なんで。


なんでこんなに、完膚無きまでにすれ違う。




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こばやし(プロフ) - ものっくすさん» いつもありがとうございます!いつも元気と活力を頂いております!ご期待にそえられるよう、続編は出来るだけ前向きに検討させていただきます!これからも頑張ります、ありがとうございます! (2017年5月19日 21時) (レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)
こばやし(プロフ) - みさこさん» コメントありがとうございます!思ったよりも続編へのご希望が多くて感謝感激でございます!気長にお待ちいただければ幸いです!ありがとうございます! (2017年5月19日 21時) (レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)
ものっくす(プロフ) - お疲れ様でした( i _ i )最高によかったです〜〜二人の続きのおはなし期待です!!新作の方も頑張ってください応援してます!! (2017年5月18日 21時) (レス) id: 4434e0f296 (このIDを非表示/違反報告)
みさこ(プロフ) - 完結お疲れ様でした!一言で言うと最高です。。。2人のその後期待しております(。。) (2017年5月18日 21時) (レス) id: 2f6f217909 (このIDを非表示/違反報告)
こばやし(プロフ) - 春乃さん» いつもコメントありがとうございます!今回も大分苦しい戦いでした……笑 いつも最後までお付き合いいただき光栄でございます!続編は今のところ迷っています…次回作も何卒よろしくお願い致します! (2017年5月18日 20時) (レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こばやし | 作成日時:2017年5月12日 3時

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