君のいる世界 13

○君の名は希望 ページ46

飛鳥side



前に立つ彼女の手は少し震えていた。




彼女が震えていることなんてあまりいや、ほとんど見た事がなかった。


「君の名は希望でセンターに立つ。｣




その事は彼女にとって大きなものだと以前言っていたことを思い出す。



昨日のこともあった手前、
少し心配に見つめていた歌い出し。


その歌声には一切震えを感じさせなかった。


それどころか力強く歌っていた。




やっぱり彼女は強い。

心配になるくらい、強い。







橋本A。



私にとって、彼女は希望だ。


後輩だけど、年下だけど、
尊敬しているし密かに憧れを持っている。




Aは強さも弱さもさらけ出す。

辛い時は辛いって言うし、辛いって言ってたかと思えばステージに立つと強さを見せる。




今だってそうだ。


さっきまで震えていた手なんてどこへ行った。




不思議そうに見ている私に首を傾げて笑っているじゃないか。




ただ、彼女は強いと思われがちである。

ファンの人にもAは強いってよく言われている。





メンバーが知っているAは弱虫で泣き虫。







そこにはギャップが生まれている。






どちらも本当の彼女で、それが彼女のいい所だ。


なぜなら、

弱いところがあるから、
同じような想いを持つ人に寄り添える。

自分が辛いことを経験しているから、
メンバーが辛い思いをしている時に身を呈して守る。





彼女は自分の経験を元にそういうことが出来る。



そんな強さが私にも欲しい。






以前そう彼女に伝えた。


そしたら、Aは笑いながらこう言ったんだ。




「あすちゃんがしてくれたこと、私もメンバーにしてるだけだよ」





私は彼女には敵わない。





君の名は希望。

私の希望は橋本Aだ。




今までもこれからもずっと。

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