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それでも長く感じる時間は、大丈夫と言った自分を徐々に蝕んでいく。私の中に海があるみたいに不安は揺れ始めて、溢れないようにするので精一杯だ。
シアはもっと大変なのに。
ここにはたくさん人がいるのに、ひとりぼっちみたいに感じて、目の前が暗くなってくる。
子供の頃の、眠れない夜みたいで怖い
「ソンイ、手離して」
聞き覚えのある声に、重く感じていた頭をゆっくり持ち上げる
「な、んで?」
私を覗き込むように見せてくれた顔は、いつもと違って少し曇っていて
私は今とても驚いているのに、どこか別の所で、メテュは晴れやかな笑顔がとても似合うのに、なんて考えていた。
メテュはお腹の近くでぎゅっと結んでいた私の手に、そっと触れる。
「ゆっくり、手、離して」
メテュにそっと手を解かれて、ようやく掴んでいた左手に、右手の爪がくい込んでいたことに気づいた。
「血出てるね。痛い?今絆創膏あるか聞いてくるから」
「…待って!大丈夫だから、」
離れようとしたメテュの服の裾を掴んだのは、離れて欲しくないからだ。
「それより、なんで?だって…今日カナダに帰るんじゃ」
「えーっと…カナダに帰るのは一旦やめた。帰国書類出しに教務室行ったら、先生がシアのこと電話してるの聞こえちゃってさ」
メテュはそのまま私のすぐ隣に腰掛ける。触れた肩が熱くなってて、汗もすごくて、まるで走ってきたみたいで
「何かあったのがシアってことと、病院名しかわかんなかったんだけど、大変なことならソンイも大変かと思ったんだ」
メテュはいつもより柔らかい笑顔を向けてくれる。嬉しいけど、私の顔はきっと酷い表情だ。
「、なんで?そんなことしなくてもいいのに」
来てくれて嬉しかった。本当は心細かった。
なのにありがとうの言葉はなかなか出せなくて
「メテュは誰にでも、誰かのためにそうやってのできるのも、いい所だし、わかってるのに、私は」
初めて会った時から、私はメテュに対して、たくさんの『なんで』を抱えていた。メテュの優しさを、嬉しく感じてもいたのに、段々惨めに感じてしまう醜い心が許せなくて、私は
「誰にでもじゃなくて、メテュの特別になりたい」
疲れてるんだ。だっておかしなこと言ってるのもわかってるのに、止められなかった。
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かかちゃん(プロフ) - ぽけこさん» ありがとうございます。楽しみという言葉がとても励みになります😭完走まで頑張りますのでお付き合いいただければ幸いです🙇🏻♀️ (7月8日 23時) (レス) id: e08b62f225 (このIDを非表示/違反報告)
ぽけこ - この物語のメテュが魅力的すぎて大好きですーーー!続き楽しみにしております♡ (7月8日 5時) (レス) @page45 id: 97f769401c (このIDを非表示/違反報告)
かかちゃん(プロフ) - なのこ5546さん» 嬉しいコメントありがとうございます。物語が平坦過ぎて、皆さんどう思われているかと考えていたので、とても励みになります🥲🫶 (6月3日 21時) (レス) id: e08b62f225 (このIDを非表示/違反報告)
なのこ5546(プロフ) - 最新話読みした!まさかの展開でびっくりしています🥺テレ推しですがどちらとくっついても主人公が幸せならと思います🫶更新は大変だと思いますが頑張ってください! (6月3日 19時) (レス) @page29 id: 2327b9d39c (このIDを非表示/違反報告)
かかちゃん(プロフ) - !?さん» 先程違う方から、名前が直せないとお話頂きました。!?さんに変えられるようになったと言ったのに出来ておらずすみませんでした (5月18日 23時) (レス) id: e08b62f225 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かかちゃん | 作成日時:2023年5月17日 0時