わたしの願い事

33 (テレside) ページ33

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「『話したいことがある』なんて、別れ話の典型的な前触れですね」



席に座る前に、彼女はそう言った。



「ごめん」

「謝らないでください。意外と早かったから少し驚いているだけです」



いつも待ち合わせしていた塾の前のファミレス。この時間帯はとても空いている。席は決まって窓側の端。お喋りはもちろん、時にはここで勉強したりした。



「せめて1年記念日まで待ってくれれば良かったのに」



あと2ヶ月程で1年。前回会った時に彼女がそう言っていたことを思い出す。



「気づいてましたよ。だってテレオッパ、キスどころかハグのひとつもしたこもないですし。それでも一緒にいられればいいと思ってました」


平然と話す彼女の頬に、静かに涙が伝う。好意に甘えて、こんなに傷つけて、自分のしてることが最低だって思い知らさせる。



「好きな人が出来たから、別れて欲しい」



優しくしようとしてしまった。でもそれは違う。そんなの彼女のためなんかじゃなくて、自分が楽になるためにすることだ。



「後悔しても知りませんから」



飲み物はまだきていないのに、飲み物代をしっかり置いて、彼女は振り向くことなく立ち去った。

彼女を素敵だと思っていた。僕のことを芯があると言っていたけど、そんなことなくて、それはきみのことだよって伝えれば良かった。





「傷つけてごめん」





届かないのに声に出して呟いた。あまりにも静かな別れで、1人取り残されると急に寂しさが込み上げてきたけど、慌ててそれを飲み込んだ。





泣いていいのは僕じゃない。





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