わたしの願い事

23 寮 ページ23

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ハンビンは夏休みに入ってから初めて実行委員会を休んだ。ダンススクールの評価日らしく、前回の集まりの時にケイタ先輩にどうしてもと頼み込んでいた。



「そんでもって雨か」



ただでさえハンビンがおらず、委員会が面倒だと思っていたのに、帰りは予報を大きく外れて雨。ため息と一緒に独り言も漏れてしまった。
夏休みの課題のために教科書やらなんやらを教室に取りに行っていたら、みんなあっという間に帰ったようで校内はとても静かになっていた。

意を決して自転車小屋まで走ってみたものの、既にびしょ濡れ。髪の毛はワカメみたいだろうし、シャツもスカートも絞れそうだし、このままでは教科書達も危ういが、どうもこうも選択肢は走るの一択のみ。

さて、元バスケ部(補欠)の瞬足の見せ所かな。




「いやいや、何してんのよ」



絵に書いたような、よーいドンのポーズの時だったから、声をかけられた喜びより、恥ずかしさが残る。



「ケイタ先輩お疲れ様です。ご覧の通り傘を忘れまして」



この予報じゃみんな傘なんて持ってないだろうけど。それにしてもケイタ先輩は濡れてないような…



「今俺のこと仲間かと思ったでしょ？残念ながら、学校に置き傘してるから濡れなかったんだな〜」



かーっ、私の好きなニヤケ顔でドヤられた。今日で唯一幸せな出来事だわ。



「ケイタ先輩って隠れファン多いですよね絶対」

「そこは普通にファンで良くない？あとさ、オッパ呼びにしなよ。ハンビンとメテュの友達なんでしょ？」

「いやいやそんな、恐れ多いです。後ろから刺されちゃいます」

「ふはっ！なにそれ(笑)」

「いや冗談じゃなくて本当に。先輩は寮に帰るとこですか？」

「そ！自転車小屋通るとあんまり濡れないんだよね。とりあえず傘貸そうか？駅まで送るのは面倒だし、今貸して俺が濡れるのも嫌だから、寮まで取り来てくれるんならだけど」



ハンビン先輩なら絶対傘を貸して濡れて帰るタイプだけど、ケイタ先輩はこうゆうスタンスだから私の推しなのだ。予想と言うか願望だけど、好きな子にだけちゃんと優しいタイプなんじゃないかな。



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