snow touch

ep.4 ページ5

mm side




「どうぞ」
『お邪魔しまーす。え、めっちゃ綺麗じゃん！！』
テンション高めに、
さすがモデルだー、うわっめっちゃおしゃれ！
なんて騒ぎながら、
しっかり脱いだ靴は揃えてる。

あぁこういうところも、らしくて好きだな、
なんて思ったりして。
つくづく俺は単純だ。



「洗面所、そこね」
『はーい』
軽く案内して、俺は近くの店でテイクアウトしたご飯を
温めるためにキッチンに向かう。



「あ、そこ、適当に座ってていいよ」
『…あ、うん！ありがとー』

リビングに入ってきたあべちゃんが、
ほんの一瞬、
落ち込んでるような、
考えるような顔をしてたような気がする。

すぐにいつもと変わらない優しい顔で
笑ってくれたけれど。
ほんの、一瞬だけ。



俺は本当に馬鹿だな。

話を聞くよ、と言ったのは自分のくせに。
楽しくて、笑ってくれるのが嬉しくて、忘れていた。
ずっと、無理をさせていたのではないか。
これはきっと本末転倒ってやつだ。



『なんか手伝う？』
どうやら手が止まってたらしい。
気づいたら横にいて。
やっぱ疲れてたんじゃない？大丈夫？って。
結局、気を遣わせてる。


「…ごめん、話聞くよなんて言ったけど。
　俺が話したかっただけ…なんだと思う。癒されんの。
　あべちゃん、マイナスイオン出てるからさ」

素直に伝えれば、
なんだよそれ、俺、もしかして先輩ぽいことできてる？なんて。
照れくさそうに笑うのが愛しくて。


やっぱり、
好き、だなって。


それから、また、くだらないことを話して、
楽しくなって、明日にひびかないようにちょっとだけって、
一本ずつ缶ビールを開けた。

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