お邪魔します【crsm】 (ページ6)

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＃５きっかけページ6

「Aは何食べる？」

『えっと、アイスコーヒーとミルクレープにしようかな…』

ーーーーーどうしてこうなった。

彼と出会ってから早２ヶ月。
また例のカフェで再会し、一緒にお茶しないかということになった。
どうやらこの日は２名からしか注文できない限定メニューがあったようで、たまたま居合わせた顔見知りの私に声がかかった。
彼は無表情ながらも嬉しそうな雰囲気を醸し出していた。

お互い自己紹介をすると、彼は〈伊藤ふみや〉君というらしい。まさかの19歳だった。
大人っぽいので同じ歳くらいかと思ったら、未成年だったことに驚いた。

「俺、今、７人で生活してるんだよね」

『え！シェアハウスってこと？楽しそうだね』

他愛もない話をしていると、彼がシェアハウスをしている話題が出てきた。
男の子７人で生活しているようで、毎日賑やかなんだそう。
丁度家のことは私も悩んでいたので、少し羨ましかった。
まあ、癒し空間を他人と一緒に過ごすなんて、自分には中々できないことだなと感心していた。

『シェアハウスかぁ…私、今家探してるんだよね。大家さんから退去命令出ちゃって。色々探してるけど、中々良い物件がないんだよね』

「ふーん、そうなんだ。じゃあうち来れば？」

『そうだよねぇ……………………………え？なんて？』

「行くところがないなら、俺と一緒に暮らさない？」

『…………………………………え？？？』

「A困ってるみたいだし」

『……………………………いやいやいやいやいや！！！！おかしいでしょ！ただのお財布落とす拾うの関係！いきなりなんでそういう発想になるのよ！』

「なんで？ダメ？その関係性は一緒に暮らしちゃいけないの？」

『まあ…だからダメってことはないんだけど…』

あまりに真っ直ぐな瞳で言われるものだから、一瞬すぐにイエスと言ってしまいそうだった。
その後も彼のなんで？ダメ？攻撃を受けながら必死に返答をしていたが、段々どうでもよくなってくる。
私も家を探してる、家を提供してくれる、それでいいじゃないか。そうとすら思えてきた。

実際、家にこだわるあまり、退去日まで１ヶ月を切っていた。
ここまで言ってくれるのであれば、新しい家が見つかるまでお世話になるのもアリなのかもしれない。

『………………………………………お世話になります』

「ハハ、本当に来るんだ」

他の６人の方が受け入れてくれなかったらすぐ出よう。
少しの間、少しの間だけ、お邪魔しますね。