. ページ28
.
「もう寝んの？」
いつの間にかお風呂から出ていた彼は、私の寝ているベッドに腰掛けた。
「…ほんとに泊まるの？」
「はぁ？お前が言ったんだろ」
「…そうだけどさ」
呆れた顔をしながらふっと笑う。
「俺はお前みたいに逃げたりしねぇから安心しろ」
そう言って私の隣に寝転んだ。
私を抱き締めるように腕を回す彼と向かい合う。
「……聞かないんだ」
何を、と言わなくても簡単に質問の意味を理解する彼はまた私の頬に触れ、目を細めた。
「ムリに話さなくていい」
「…優しいよね、翔太って」
「そうか？」
「…うん、…みんなにも、だろうけど」
「Aにだけだよ」
嘘でも良い。
彼の言葉一つ一つに安心してしまっているのは事実で、今の私にはそんな彼の言葉が嘘だとしても嬉しかった。
だから、なんだと思う。
無意識のうちに話し始めていたのは、きっと。
「……父親にさ、襲われた事があるの」
隣で息を飲む音が聞こえる。
向かい合っているが、目は合わせていない。
「中一の時、あいつに耐えられなくなった母が出て行った日」
今彼の顔を見たら、泣いてしまう気がした。
「…少しも母を大切にしてこなかったくせに、似てるからって娘抱く？普通」
強がる事が出来るのもきっと今だけで、とっくに声なんか震えてる事、本当は分かってる。
「…だから、消したくて、あの時の記憶を、体に触れた感覚を、私の中に残る苦しみを全部、忘れたくて、誰でも良いから抱いて欲しかった」
彼の顔を見たら、なんて嘘だ。
気付けば横に流れる雫は枕を濡らしていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 823人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
バンビ(プロフ) - ただの渡辺担さん» コメント、リクエストありがとうございます。是非、参考にさせて頂きます。これからもよろしくお願いします。 (2021年3月27日 12時) (
レス) id: 99dc10468d (このIDを非表示/違反報告)
ただの渡辺担 - すごい面白くて全作品読ませていただきました！今リクエスト募集されているのかわからないのですが、よかったら『ワインクーラー』をテーマにした作品を読んで見たいです！ (2021年3月27日 10時) (レス) id: cfc10ba5d0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：バンビ
| 作成日時：2021年2月18日 11時
