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「…それが、今と同じってことやんな」
向井くんの事を好きになれたら、そう思う事が何度あっただろう。
このまま向井くんと一緒にいてしまおうかと思ったりもした。
でも、また同じ事を繰り返すだけだ。
それに、もう大人なんだ。
翔太への気持ちがある事はしっかり分かってる。
そんな失礼な事、私には出来ない。
「…好きになればええのに、」
そう小さく呟いた向井くんを見ると、久しぶりに目が合った。
「…向井くん、」
「なんて、嘘です」
一瞬見えた今にも泣いてしまいそうなほど歪んでいた顔は、瞬きをする間にいつもの笑顔に戻っていた。
「ほんまは最初から分かってますよ、翔太くんに勝ち目なんて無い事くらい」
そう言うとケータイをチラリと見て席を立つ。
「お礼なんで奢ります、って言うつもりやったんやけど、許してくれない人がおんねん。やから、あとは二人でちゃんと話して下さい」
二人で、その言葉で私が思い浮かべる人は一人しかいない。
向井くんの後ろに翔太が見えた時、初めからこうするつもりで私を誘ってくれたんだなと思った。
翔太が私たちのもとへ来る。
どうして、と聞く前に向井くんは出ていってしまった。
まだ、何も言えてない。
ごめんねも、ありがとうも、まだちゃんと伝えられてないのに。
最後まで向井くんの優しさに助けられた。
私の方が年上なのに、とその優しさに罪悪感さえ感じてくる。
出ていった向井くんの残像を見つめ、せめて仕事では向井くんにとって頼れる先輩であろうと思った。
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バンビ(プロフ) - カレソさん» カレソ様、コメントありがとうございます。感想を頂く事が何より励みになります。最後まで読んで頂きありがとうございました。 (2020年9月20日 20時) (レス) id: 290b31182b (このIDを非表示/違反報告)
カレソ(プロフ) - 完結されていたので一気読みできて最高でした。とにかく胸が締め付けられて涙がちょちょぎれてしまいました。素敵なお話ありがとうございます!今後も応援しております。 (2020年9月20日 18時) (レス) id: 38540f6201 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - かなさん» かな様、コメントありがとうございます。もっと皆様に楽しんで頂けるように頑張りますので、今後もよろしくお願いします。 (2020年9月6日 23時) (レス) id: d49da2a08d (このIDを非表示/違反報告)
かな(プロフ) - びっくりするくらい思わせぶりな行動が多いくせになにもこっちには与えてくれない感じが苦しいんですけど好きです!続き楽しみにしています。 (2020年9月6日 22時) (レス) id: d4d46f8c31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:バンビ | 作成日時:2020年8月31日 1時