アメリカーノ (ページ16)

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「そうだよな、ごめん」

自分でもよく分からない感情に腹が立って、一周回って笑えてくる。

「……あの時、俺さ、」

…女の勘って当たるんだよ。

声色と、表情と、言葉の間で、言いたい事が分かってしまう程あなたの事が好きだった。

「じゃあ、私行くね」

直接あの人の口から聞くのが嫌で、次の言葉を聞く前に逃げる。

買い物どころじゃないな、と思いまだ何も入れてなかったカゴを元に戻しスーパーを出た。

“好きだった”そんな事いまさら聞いても何も変わらないし、あの時知っていたとしても私たちが結ばれることは無かった。

あの出会いが間違いだったなら、私たちが離れたことは正しかった。

ぐちゃぐちゃな感情の中、考えるのは蓮の事で。

誰かそばにいるか聞かれた時に浮かんだのも蓮だった。

蓮に、会いたい。

こんな時に考えてしまうなんてどういう事か気付かないフリが出来るのもきっと今のうちだ。

一度も自分からした事の無かった電話をかけた。

「…なんで、でないのよっ…」

何度掛けても出ない電話に、携帯を投げようとしてここが外だと言う事を思い出す。

私は特別な存在だと勝手に思っていたけど、蓮にとっては呼べば来てくれるただの都合のいい女で私が会いたい時には会えないくらい忙しい。

仕事か遊びか知らないけど、私が彼にとっての一番だなんてある訳がなかった。

色んな感情が混ざって泣くこと以外に落ち着ける方法を知らない私は、見えない視界に躓きながらも家に帰った。

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