キスしないと出られない部屋【文スト】

キスしないと出られない部屋　谷崎潤一郎 ページ29

谷崎潤一郎の場合


「ええっと、困ったね。どうしようか？Aちゃん」
「どうするもこうするもないよ。メンバー登録の時点でゲームオーバーだよ」
「……やっぱり僕なんかとはキスしたくないよね」
「ううん、したい」
「だよね、したいよね。…………………………ぇええ？！」
「でもナオミちゃんに悪いからできない。私はあんなに可愛い天使を裏切れない」
「え？ま、待って？一体どういう………」
「ずっと潤一郎の事見てた」
「………え？」
「ナオミちゃんは知ってるけど、私の片想い歴は結構長い。何故なら潤一郎が鈍感だから」
「え？なんか、ごめん…………」
「それに潤一郎とナオミちゃんはお似合い過ぎる」
「そ、そうかな？」
「うん、だから私はナオミちゃんに全部話した。好きって事、いっぱいナオミちゃんにぶつけた。そしたら数日後にね、ナオミちゃんとびっきりお洒落して私の家に来たんだよ。何でか分かる？」
「もしかして、ナオミは…………」
「そう、家族になろうって言ってきたの。私は既に籍が入っていますから、あとはAさんだけですねって」
「…………」
「結婚式は、潤一郎が驚くくらい可愛いウエディングドレスを着て、二人でっ、潤一郎を挟み込んでやろうって！……っひぐ！それを聞いたとき、嬉ぐって……！」
「Aちゃん……」
「でもわかってるんだぁ。潤、一郎、は……私なんてっ、眼中にないって」
「そんなことない！」
「……え？」
「ナオミは、何の根拠もないのにそんなこと言ったりしない。実は、僕も……ナオミに話してたんだ。Aちゃんの事、好きになっちゃったかもしれないって」
「それって……」
「うん、Aちゃんがナオミに告白した次の日。じゃなかったら僕は今頃足枷でも嵌められてるか、ナオミと心中してるかできっとこの場にはいないよ」
「……っはは、ナオミちゃんが、ひっぐ、恋の天使に、なってた、なんてっ、知らなかったよ！」
「うん、だからもう泣かないで？」
「そんな、急にいっ、言われても……」

ちゅ

「……涙の止まるおまじない」
「な、なっ……！」
「ねえ、今日は家に泊らない？…………ナオミもきっと待ってるよ？」
「っ今後とも、宜しくお願いします！」



(三人一緒の未来って、きっと素晴らしいものになると思うんだ)

キスしないと出られない部屋　F・ドストエフスキー→←キスの後　　　　　　　　　　国木田独歩

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す