キスしないと出られない部屋【文スト】

キスの後２　　　　　　　　　森鴎外 ページ18

「首領、こ、これは………」
「婚姻届だよ？ほら、あとはAちゃんが書くだけだ」
「う、嘘でしょう？！む、」
「………む、…………何だい？」
「無理じゃないです………」
「うん、いい子だね。飴ちゃんをあげよう」
「………ありがとうございます。……………あの、首領。差し支えなければ、教えてほしいのですが……。何故結婚なんかを」
「決まってるじゃないか」
「え？」
「結婚をすれば堂々と子をなせるからだよ」
「？！」
「ああ！Aちゃんから生まれてくる女の子はきっと天使のように可愛いのだろうね！！そうだ、一寸こっちへ来て見てくれたまえ！」
「きゃ！ちょ、首領？！」

ばたんっ

「………こ、これは」
「私達の愛娘に着せる予定のドレスだよ！もう、此の部屋では収まりきらないくらいになってしまってね！！ああ、あれはAちゃんが着る予定のドレスだ。妊娠中でも着用できるんだよ、素晴らしいだろう？あの裾のフリルがかわいくってね、それに」
「やめてください！！！」
「………Aちゃん？」
「わ、私は、繁殖犬じゃないんです。こんなの、もう」


「わた、しはっ、首領とけ、結婚なんてできません。できないんです………。どうか御慈悲を………」

「……うーん、困ったなぁ。Aちゃんは一つ勘違いをしているね」

「………え？」
「私とAちゃんの関係に於いては、Aちゃんの意思なんて関係ないんだよ」
「！い、嫌っ」
「こら、無理と嫌は言っちゃ駄目だと言ったじゃないか。悪い子だ」
「………あ、ご、ごめん、なさ」
「許しません。………さあ、Aちゃん」
「首領………お願いです、考え直して、」
「今すぐ婚姻届に必要事項を記入し提出しなさい」



(Aちゃんの事もちゃあんと可愛いがってあげるからね)

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