第108話「振り返らず前に」 ページ24
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「いやでも一方的には会えるな。私がこっそり隠れて彼らを見ることくらいは出来るわ。みんなの老けた顔見てみたい」
「君のその変にポジティブなとこ、僕は好きだよ」
なんか褒められた。
「それで。A、さっきのジジィ覚えてる?」
「枯れ木みたいなおじいちゃんのこと?お坊ちゃま口悪いよ」
「自分を殺した老害たちの仲間だとしても、そんな事言える?」
え、と間抜けな声が溢れた。
そして急に立ち止まった悟お坊ちゃまの背にバイン!とぶつかって床に倒れた。
私の方が力強いのになんで、ああ無敵バリアーか。
「………私を殺したのは使用人Aでは?」
「示唆したのは老人共だ。ソイツはまんまと利用されただけ。まあ殺した屑には変わりはないが」
転がったままの私に手を伸ばした悟お坊ちゃま。
なんとなくその手を見つめる。
「呪術界の総てを取り仕切ってるつもりでいる腐った奴らの断片。この僕すら利用しようとした愚かで痴れ者で愚鈍極まりない奴らが、君を「不必要」だと考え秘密裏に処理しようとして、まんまと成功させた。
あのジジィは、そのイカれた思想を正善と信じて疑わないイカれた仲間の一人」
「ほら、早く」と言われた。言われたけど。
黙ったまま彼の手を取った。そのまま引っ張られる。
立ち上がれたのは良いけど、今日の君はなんか、怖い。
「ありがとうございます」
「君は、どう思う?」
「え?」
「それを聞いて、それでもあのジジィに、さっきみたいな態度取れる?」
………君が怒ってるのは、私がさっきおじいちゃんに取った当たり障りのない態度?
「取れる。だって私を殺すように指示した人とあのおじいちゃん、関係ないでしょ?」
「そりゃそうだけど」
「じゃあ良いよ、別に。大体何十年前の話ですか。もうとっくにその老人とやらは死んじゃってるでしょ。寿命やら事故やら他殺やらで全員死んじゃったでしょ。
そんで、今私が生き返ったこの状況を見て、天から見てるのならすっごい愉快な顔してると思うの」
えへへ、と笑う。
悟お坊ちゃまが笑うことはなかったけど。
「もう私は五条家次期当主様に仕える専属メイドじゃないし、殺される理由無いじゃんね。殺されたのはマジでクソだけど、結果的に生き返ったんならモーマンタイ!おじいちゃんだって私を殺さないでしょ。だって全然私、眼中に無さそうだったし」
温かくて大きな手をにぎにぎする。
この実感があるのなら、別にもう良いよ。
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なぎさん(プロフ) - めっちゃ面白かったです!素敵なお話ありがとうございます!! (9月17日 23時) (レス) id: 3e92d95cce (このIDを非表示/違反報告)
しろごま - 面白いです!あまり人の事には突っ込めませんが更新頑張って下さい! (2022年9月24日 7時) (レス) @page26 id: 4dc97dea49 (このIDを非表示/違反報告)
レネット(プロフ) - もう呪術は書かれないのでしょうか… (2021年7月16日 0時) (レス) id: ec8ec8961f (このIDを非表示/違反報告)
あいねこ(プロフ) - コメント失礼します。今まで読んだ作品の中で個人的に一番好きです!更新頑張ってください! (2021年1月2日 18時) (レス) id: a4bed0c9af (このIDを非表示/違反報告)
. - 凄く面白かったです。続きが読みたい!!! (2020年12月17日 5時) (レス) id: 0b60fa6ccb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nny。 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年11月30日 19時