第80話「雀の涙の一雫」 ページ44
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「しかしまあ……こうなるだろうとは流石に分かってたけど」
何をでしょうかお坊ちゃま。
彼は私にチラリと視線を寄越した。なんだか分からないまま彼の目(黒の目隠しで隠されてるけど)をジッと見つめる。
そのまま数十秒経った。
「俺アンタらから醸し出される独特な雰囲気、未だに慣れねーんすけど。見つめ合って何してんの?」
「慣れろイシバシくん。慣れるが仏だ」
「どこからどう突っ込んだら良い?」
「シンプルに間違えた。イタドリくん、正直私はちょっと助けてほしいと思ってる。正直目が離せんくて困る」
「目ぇ離せば万事解決じゃないっすかね」
目が離せんのだって。
所詮睨み合ってるような状態。彼は私を品定めでもしているだろうか。怖すぎる。昔「A、来月からお前の給料キュウリな」って言われた時のトラウマが蘇る。
その給料、塩昆布と一緒に漬けて食べてたけど。
「A。君は、これからどうしたいと思ってる?」
「これから……?」
………ああそうか。そういえば私、この世界に、というか二十年後の時代に落ちてきたんだよな。
つまり帰る場所も居場所も無いと。
「あっ、私の家」
「残念だけど、君の両親は数年前に亡くなっている。
八年前に君の父親が病で倒れてそのまま、母親はその後を追うように首を吊ったらしい。家は君の母親の親族の意思で取り壊されたらしくて、帰ってもきっと更地の状態だよ」
「ありゃ、そうなの」
そうだったんだ。あの人たち死んでたのか。
素敵な夫婦愛ですね。娘を残して二人は地獄でランデブーですか。
しかも更地にするとか。家くらい残してくれたって良いじゃんね。何してくれてんの親族、お前らのせいで可愛い娘はまんまと路頭に迷う羽目になったよ。
そんなことを考えてたら「え?」とイタドリくんが声を上げた。
ようやく目を離す事に成功した私は彼の方を見る。彼はとてもビックリした顔をしていた。
「いやその、あんま他人の家の事情に首突っ込むのはあれだし、メイドさんのことも全然知らねーしさっきから二人だけの会話での内容すら理解できてねーけど………親が死んで、悲しくはねえの?」
彼の言葉に、ああと納得する。
「全然」
だって私の親は、元よりこの世界に存在しないのだから。
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sou(プロフ) - はじめまして!!読み始めたばかりなのにもうこんなにも進んでしまいました!!基本的に夢小説でのギャグ系苦手なのですが、こちらすっごく面白くて!!これからも最終章行ってきます! (2022年2月11日 16時) (レス) @page50 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
巫礜 - 2章完結おめでとうございます!!とても面白くて一気に読んでしまいましたー!3章も楽しみに待ってます!無理せず頑張ってください!応援してます!! (2020年11月29日 23時) (レス) id: af56b806d8 (このIDを非表示/違反報告)
き(プロフ) - 完結おめでとうございます!今回も楽しく読ませて頂きました!展開に置いてかれる悠仁がちょっと面白かったですw3章も楽しみにしてそれこそ犬のように待ってます!! (2020年11月29日 13時) (レス) id: c55596aced (このIDを非表示/違反報告)
呉羽(プロフ) - 2章完結おめでとうございます!いつも通知が来るたびワクワクしながら開かせてもらってます。これからも応援してます!では、お体に気を付けて。 (2020年11月29日 12時) (レス) id: cfabc7c0e0 (このIDを非表示/違反報告)
レミリア(プロフ) - 第2章の完結おめでとうございます。いつもはぁはぁ息を荒くしながら見させて頂いております(キモい)第3章も楽しみです! (2020年11月29日 10時) (レス) id: 0a87aae102 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nny。 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年11月23日 1時