「違う違う、そうじゃない」 ページ8
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しかしどうしよう、私の力加減で黒名の髪引き千切ったら。
「黒名、覚悟は良いな?」
「何故髪を結んでもらうだけで腹を括る必要が……?」
「普通に不器用だからお前の毛根が亡びるかもしれない」
「俺の毛根が亡びの危機に???」
マジで緊張してるから。
「よく分からないが、責任を取って貰えれば問題無い」
「勿論取るつもり。リーブ31の代金は全額私が持つから」
「違う違う、そうじゃない」
「鈴*雅之さんでいらっしゃいます?」
落ち着け、腹を決めろ。髪を結ぶだけだ。
黒名の傍に寄り髪に触れると結構フワフワしてる。凛とは違うな。思わず撫でたら頭をコテンと倒した黒名。
「アンタの撫で方はとても優しい。安心するし、信用してる。だから心配してない」
目を閉じて呟く黒名。
こんな私を信用してくれてるのか。
「頑張るわ」
とにかく「手加減」を心に刻もう。
「三つ編みむずい」
「そんなむずいのを俺は毎日やっている」
「これを機にイメチェンするか」
「俺のアイデンティティ……」
「ゴメンな簡単に言っちゃって。私も自分から空手抜いたら生きていけないわ」
「弱いAさんが想像出来ない」
「出来なくて良いよ」
「微妙にズレた三つ編み」
「Aさん、不器用だな」
「噛み締めるように言うなや」
和やかに喋りながら勢いで結んだらなんか草臥れた三つ編みが出来上がった。私に女子力というものは存在しない。
「ゴメン、髪ゴムあげるから後は自分で直して……」
「どうして謝る?Aさんは一生懸命やってくれただろ。
ただちょっと力加減がアホなだけだ」
「もしかしてめちゃくちゃ怒ってたりする?」
違うと首を横に振ったけどお前。
普通に「アホ」って言いやがってお前。
「……ありがとう、結んでくれて。とても嬉しい」
目を細めて三つ編みを弄る黒名。大袈裟だな、結んであげただけなのに。
ブザーの音がした。黒名は立ち上がりながらいつまでも髪の感触を確かめている。
「Aさん。……俺達にはアンタが必要だ。だから、辞めないでほしい」
黒名の目が真っ直ぐ私を見た。
クシを手にしたまま頷く。
「マジでまだ辞める気は無いからみんなにそう伝えといてくれる?」
じゃないと多分永遠に言われる。
黒名にそう伝えたらちょっと目を見開いて「分かった」と頷き去った。
これで少しは落ち着けばいいけど。
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シナモン - とても面白かったです‼士道最高でした‼ (11月23日 10時) (レス) @page36 id: 8b3e9c667d (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - いつまでも応援してます (10月28日 18時) (レス) id: 76125fe83b (このIDを非表示/違反報告)
あ(プロフ) - 面白かったです!!すごく!文才を感じました! 是非また更新してくださると嬉しいです!! 応援してます! (7月27日 1時) (レス) @page36 id: c33439ae2b (このIDを非表示/違反報告)
羽鶴(プロフ) - もしかして更新終了してしまいましたか…? (6月23日 23時) (レス) @page36 id: fcd2bda98b (このIDを非表示/違反報告)
ペペのん - え……お…終わり!?でも、この作品とっても面白かったです!! (6月23日 18時) (レス) @page36 id: 97854132f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nny。 | 作者ホームページ:
作成日時:2023年3月23日 0時