【糸師凛】ママを捨てたお父さんはいつも何を考えてるのか分かんない。

17、「いちばんの」 ページ17

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「お父さん、ケシキきれい……」

「ここより上行けばもっと凄えぞ」


　


「クルマの中で見てたから、私はもういいかな」


　


「おいもう目的達成したみてえなツラしてんじゃねえ、このあとどういうモチベーションで上がるんだお前」


　


今はもう、お父さんのせなかをおいかけてるみたいなかんじです。


　


「お前がもう良いなら降りるけどどうすんだよ」

「いい……がんばる。お父さん上まで行きたいもんネ」

「一丁前に気ぃ遣うんじゃねえ、つーかなんで俺がゴネてお前をここまで連れて来たみたいな話になってんだボケ」



お父さんのためにがんばろうっておもってたよ。
お父さんはちがうの？私のため？



「ここのみち、でんぐりがえしで下りてったらおもしろそう」

「ぜっっっったいやめろ。原型留めてねえ無惨な死/体が出来上がるから」



手をつかまれた。
さすがにイタイのはいやだからやらないのに。



またカラのペットボトルがあったからがんばってけってみたらコロコロころがった。



「私、サッカーせん手なれそう！？」

「自己肯定感バカ高えのは別に良いけど5000000%ムリ」



「ゴールだったら300てんくらい入らない！？」

「インフレしすぎ。一試合5回ゴール決めたら1500スコアってバカみてえな数字だな」


　


「私だけゴールしたら3000てんくれないかな……」

「天と地がひっくり返っても絶対叶わねえぞその夢」


　


そうすればお父さんも私のこと、スゴイってみとめてくれないかな。


ぼんやりかんがえて、足をとめた。


　


「お父さんと冴おじちゃん、どっちがスゴイ？」


　


そのことばに、お父さんも足をとめた。


　


「……知らねえ。そーいうお前はどっちが」

「お父さん！！！！！」

「っ……即答かよ」



なぜかちょっとだけおもしろそうにわらったお父さん。

なんで？だってお父さんのほうがスゴイのに。


　


「私がだいすきなお父さんが、だれよりもなによりも、せかいでイッチバンかっこいいよ！！」


　


そう言って、「こーーーのくらいスゴイ！」ってりょうの手を広げる。



ふりむいたお父さんはたかいところから私を見ている。


つめたいかぜがほっぺにあたってかみのけがゆれた。


　


さっきまで見てた顔よりずっとやさしい顔して、お父さんは立っている。



　



「そうかよ」



　



私のだいすきなお父さんが、なによりイチバンなのです。



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