8.優艶ローズ！ ページ3
寮に帰れば、リドル先輩は僕にお茶会をしようと誘ってくれた。
その誘いに笑顔で頷き、2人だけのお茶会が始まった。
｢──そういえば、朝ハーツラビュル寮生がハートの女王の石像に傷をつけたらしいんだ｣
｢っ………そ、そうですね｣
聞き覚えのあるその言葉に、思わず飲んでいた美味しい紅茶を吹き出してしまいそうになるのを耐え、当たり障りなく返す。
｢全く有り得ない話だと思わないかい？公共のものに傷をつけただけでも度し難いのに、それがグレート・セブンの、しかもハートの女王だったなんて！｣
そう憤慨するリドル先輩は心做しか昨日よりもカリカリしているようだった。
｢…その、傷つけた人って誰だったんですか？｣
｢残念ながら、僕はその場に居合わせなかったから誰かは知らないんだ。だから見ていた寮生に聞いて、見つけ次第首をはねるつもりだよ｣
｢(ごめんエース、ご愁傷様)｣
この場にいない彼に心の中で手を合わせておく。きっと明日には彼の赤いハートマークに映えるお洒落な首輪が着いていることだろう。
ハートマーク、と考えて、はた、と思い出す。
｢リドル先輩、寮生たちって皆頬にマークが描いてあるじゃないですか。僕は何も無いなぁって思ったんですけど｣
僕の言葉にリドル先輩は｢あぁ｣と零したかと思えば、腕を組んで考え始めた。きっと決めかねているんだろう。
｢……僕が選んでも構わないのかい？｣
｢？ もちろん構いませんよ。むしろ有難いです｣
｢そうか｣といった先輩は次の瞬間呪文を唱えていた。
キラキラとした何かが宙に舞ったかと思えば、それは僕の顔に向かって飛んでくる。
反射的に目をぎゅっと瞑るが、首筋になにか感触があるだけで、痛みはない。
恐る恐る目を開くが、目の前には穏やかな笑みをうかべたリドル先輩がいるだけ。先輩は、自分の首筋をつん、と突いてみた。まるで見てみろ、と言うように。
鏡をサッと召喚して、自分を写す。そこには何ら変わりない僕の顔があるだけだった。首筋のマーク以外は。
頬が紅潮していく気がした。自然と口角も上がる。
僕の首筋のそれは、他の誰とも違う。スペードでも、ハートでも、クラブでもダイヤでもない。綺麗な赤い薔薇だった。
控えめな大きさで描かれたそれは目立ちはしないが、よく映える。
嬉しくて、口角を下げようと試みるも意味が無い。僕の表情筋は今までにないくらいゆるゆるになってしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1142人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆる(プロフ) - ほんとに面白いですね!続きが楽しみです!無理のない程度で更新がんばってください!応援してます! (2023年1月1日 0時) (
レス) @page27 id: 6719ad2600 (このIDを非表示/違反報告)
時雨ですな(プロフ) - めちゃくちゃおもしろいです！更新頑張ってください！！ (2021年6月23日 7時) (レス) id: 9e0511f770 (このIDを非表示/違反報告)
ロイミー(プロフ) - つみきさん» ありがとうございます！励みになります、頑張ります！ (2020年6月7日 14時) (レス) id: 6a770a8d65 (このIDを非表示/違反報告)
つみき - 続編おめでとうございます！お話がすごく好きで、引き込まれます。頑張ってください！ (2020年6月6日 22時) (レス) id: da29838e5a (このIDを非表示/違反報告)
ロイミー(プロフ) - りいなさん» ありがとうございます！更新頻度は下がりつつありますが精一杯頑張ります！ (2020年6月6日 21時) (レス) id: 6a770a8d65 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ロイミー | 作成日時：2020年6月6日 20時
