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「……おはようございます」
「相変わらず、その敬語癖抜けきらないねぇ」

少しでも寝ていることを願っておついちさんの部屋を覗けば、おついちさんの部屋を後にしたのは約5時間前。
だけど何の変哲もない部屋を見ればそれだけの時間ぶっ通しで編集作業をしていたのは明白。でも私は何も言わずただ、黙ってコーヒーを入れる。

だって、おついちさんの人生だもの。

違う、まるちゃんとおついちさんを天秤にかけてまでもどちらかを選べずにいる私には、何かを言う資格がないだけ。

「今日は私、家に帰りますね」
「……」
「そんな驚いた顔、しないでくださいよ」

嘘だ。正確には驚いた顔じゃなく、絶望した顔という表現の方が正しい。

「昨日のこと、怒ってる?」
「怒ってません。ただ、今日も泊まっちゃったら明日の仕事に差し支えるじゃないですか」
「……そんな分かりやすい嘘。普段なら昨日の内に言ってくれてたでしょ、……何?ちゃんと本当の理由を言って」
「……」

私がおついちさんの小さな言動行動でわかる気持ちはすごく雑破だから、おついちさんの全てがわかるなんて豪語できない。
けど、ここで嘘をついたらもう、私たちは修復も補強もできない関係になってしまう。それはとても嫌なのに。

言葉にできなくて気持ちだけが先を走っていって涙になる。

「泣くほど答えなくない?……わかった。ごめんね?長く引き止めて」

不安げに乗せられていたおついちさんの手が私を離れる。

「……ッ」

離れた手を握り返せば、おついちさんは肩をビクつかせた。

こんなにも大きい人なのに、どこかの歌詞であった“大人が勇気を仕舞う時には本気という名の意味が詰まってる”って体現しているよう。

……3→←安定剤



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作者名:nnanjokei | 作成日時:2018年4月4日 15時

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