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死が二人を分かつ時……おついちさん ページ3

作業部屋に籠ったおついちさんからくすねたアメスピを、ベランダでこっそり吸いながら、ほんのりと暖かくさらりとした春風が駆け抜けるのを感じる。


「……はぁー」


別に私は根っからの喫煙者ではない。じゃあ何故吸うのか。それは。


「ちょっとAー。からだ冷えるでしょぉ」

「……あれ?まだまだかかると思ってたのに。もう終わったの?」


私のすっとぼけた質問に、んなわけないでしょ。と笑いながらこちらへ来るおついちさんに、慌てて吸っていたタバコの火を消して掌で握る。


「……っ!」

「Aちゃん?おついちさんがこの前、口が酸っぱくなるまでなんて言ったか覚えてる?」


振り向くと、柔らかく教えを説くように、笑顔でベランダの入り口に寄りかかるおついちさん。


その目はちっとも、笑ってない。


こうなって何をいってもおついちさんを不機嫌にさせるだけだと、素直に答える。


「ニコチン依存じゃないやつが、タバコなんて吸わなくていいの」


「そう。じゃあ今、何で手を火傷したの?」


「タバコ」


「すぐに冷やしてらっしゃい」


少し不貞腐れ気味に了解の意を唱え、漸く入り口が開く。


「……買おうとしたら、いっつも止めるくせに」


入れ替わりでベランダでタバコを吸っているのを確認して少しだけ愚痴を溢す。


そもそもなんでおついちさんは吸っていいのに私はダメなのか。その理由も、口を酸っぱくしてお説教してくれた日に教えてくれたけど、その理由が気に入らない。


“「いい?僕はもういつ死んでもおかしくない歳だし、それくらい吸ってる。でもAはまだ若くて、肺だって綺麗だ。それはとても大切な宝物だよ?だから、僕が吸ってるからって無理に吸わなくていいの」”


おついちさんが吸ってるから吸いたい。じゃない。


少しでもおついちさんと離れ離れになる時間を短くしたいからお酒もタバコも制限なく……ってのはダメだけど飲みたいし吸いたいのに。


お酒もここ最近、少しずつ制限されている。


……私一人が生き残ったって、意味ないのに。

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作者名:nnanjokei | 作成日時:2018年4月4日 15時

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