検索窓
今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:683 hit

5 ページ6

真っ白な世界の中、2人は手を繋いでただひたすら歩き続けた。

そしてどれぐらい歩いたのか、やっとナナが歩を止めた。

「さて、過去に会いに行こうか」

そこに止まっていた電車に乗り込み、座席に座ると電車は発進した。
窓を見ればふわっと朧げに過去の自分が映し出されている。

懐かしい。

まだ幼い自分は元気に走り回っている。
キャッキャとはしゃいでとても楽しそうだ。
当時は無知で無邪気な可愛らしい子供だった。
毎日が楽しくて楽しくて仕方がなかったような気がする。

どれだけ過去の話になろうともこの時代の事は覚えている。それだけ楽しい思い出なのだろう。

穏やかな気持ちでそれを見ていたら、ふと幼い自分が

「僕はヒーローになるんだ!!」

と大声で言っていた。
そうだ。あの時は純粋な夢を持っていた。
少し嬉しいような、寂しいような、そんな気がした。

「子供の時はさ、楽しいか、つまらないかで物事決めていてさ。上手いか下手かより、楽しめればそれでいいって感じだったよね」

ナナが言った。

確かにそうだった。何でもかんでも楽しんだもん勝ち精神で色んな事をしてきた。
でも今は?下手だから。みんなに笑われるから。
好きなことですら周りの目を気にして何もしなくなってきた。

周りなんか気にしたくていい。自分が好きな事をすれば良い。そんな簡単な事が成長するにつれてわからなくなっていた。

少し驚いて幼い自分を見た。

「僕はね!大きくなったらヒーローになって、困ってる人を助けるんだ!だからいっぱい頑張るの!絶対ヒーローになるんだもん!!」

将来の自分に期待して無邪気に笑っている自分。

「ヒーローにはなれなかったなぁ…」

そう呟いて笑ってみようとするが、何故か涙が零れ落ちてくる。
小さい頃憧れてたヒーローにはなれなかった。期待通りの自分はどこにいるのだろう。
希望も夢もどこかに置いてきて、その場その場を凌ぐので精一杯だった。

「ごめんな……俺…」

聞こえるはずもないのに、幼い子供の自分に謝った。

そんな紫音をナナは優しく抱きしめて言った。

「大丈夫。常識外れの事は誰にも出来やしないからさ。今は“自分を守る方法”を持ったんだろうね。焦らないでいいの。ゆっくりやっていこうよ。“助ける方法”はこれから見つければいいよ」

ナナは紫音が泣き止むまでずっと抱きしめていてくれた。とても暖かかった。自分が泣いている間もずっと、記憶の自分は笑っていた。本当に幸せそうだった。

続く  (更新停止中) お気に入り登録で更新通知を受け取ろう

←4



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (7 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1人がお気に入り
設定タグ:stpr , life , ボカロ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ドヤ顔ポテト | 作成日時:2021年2月26日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。