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真っ白な世界の中、2人は手を繋いでただひたすら歩き続けた。
そしてどれぐらい歩いたのか、やっとナナが歩を止めた。
「さて、過去に会いに行こうか」
そこに止まっていた電車に乗り込み、座席に座ると電車は発進した。
窓を見ればふわっと朧げに過去の自分が映し出されている。
懐かしい。
まだ幼い自分は元気に走り回っている。
キャッキャとはしゃいでとても楽しそうだ。
当時は無知で無邪気な可愛らしい子供だった。
毎日が楽しくて楽しくて仕方がなかったような気がする。
どれだけ過去の話になろうともこの時代の事は覚えている。それだけ楽しい思い出なのだろう。
穏やかな気持ちでそれを見ていたら、ふと幼い自分が
「僕はヒーローになるんだ!!」
と大声で言っていた。
そうだ。あの時は純粋な夢を持っていた。
少し嬉しいような、寂しいような、そんな気がした。
「子供の時はさ、楽しいか、つまらないかで物事決めていてさ。上手いか下手かより、楽しめればそれでいいって感じだったよね」
ナナが言った。
確かにそうだった。何でもかんでも楽しんだもん勝ち精神で色んな事をしてきた。
でも今は?下手だから。みんなに笑われるから。
好きなことですら周りの目を気にして何もしなくなってきた。
周りなんか気にしたくていい。自分が好きな事をすれば良い。そんな簡単な事が成長するにつれてわからなくなっていた。
少し驚いて幼い自分を見た。
「僕はね!大きくなったらヒーローになって、困ってる人を助けるんだ!だからいっぱい頑張るの!絶対ヒーローになるんだもん!!」
将来の自分に期待して無邪気に笑っている自分。
「ヒーローにはなれなかったなぁ…」
そう呟いて笑ってみようとするが、何故か涙が零れ落ちてくる。
小さい頃憧れてたヒーローにはなれなかった。期待通りの自分はどこにいるのだろう。
希望も夢もどこかに置いてきて、その場その場を凌ぐので精一杯だった。
「ごめんな……俺…」
聞こえるはずもないのに、幼い子供の自分に謝った。
そんな紫音をナナは優しく抱きしめて言った。
「大丈夫。常識外れの事は誰にも出来やしないからさ。今は“自分を守る方法”を持ったんだろうね。焦らないでいいの。ゆっくりやっていこうよ。“助ける方法”はこれから見つければいいよ」
ナナは紫音が泣き止むまでずっと抱きしめていてくれた。とても暖かかった。自分が泣いている間もずっと、記憶の自分は笑っていた。本当に幸せそうだった。
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作者名:ドヤ顔ポテト | 作成日時:2021年2月26日 0時