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「今シオンはね、病院にいるんだよ。急カーブを切った車に跳ね飛ばされたらしくて。意識不明で病院で寝ているんだよ」
和やかな表情のままナナは穏やかにそう言った。
でも紫音は意味がわからなかった。
何故なら、自分は今ここにいるし、どこからどう見ても今いる場所は病院では無いからだ。
そんな思いがナナにも伝わってしまったのだろうか。クスクスと笑いながらナナが説明した
「ここは無意識の境界って言って、まあ、生と死の境目みたいな場所だよ。魂としてのシオンはここにいるけど本体は病院にいるのよ。魂抜きだから意識不明だけど」
なるほど。そういうことか。よく漫画でみるやつだ。
「生きるか、死ぬか、選ばないといけないって感じだったりする?」
おずおずといった感じでナナに聞いてみた。
うーんとナナは首を傾げながらいった
「まあそんな感じかな。俺はその手伝いに来た感じだし。早速だけどちょっと考えてみようか」
そう言うなりナナは紫音の目をじっと見つめて真剣に聞いた
「シオンの人生は生きたいと思えるほど楽しいもの?」
じっと考えてみた。
辛い事がたくさんあった人生だった。
どうしようもなく辛くて、不安で、悲しくて、涙が止まらない時だってあった。
「いや…そこまで楽しいものじゃなかった気がする」
ゆっくりと言葉を紡ぎ出した。
「そう?じゃあ死にたいと思えるほど過酷なもの?」
もう一度考えてみた。
楽しい事がたくさんあった人生だった。
大好きな仲間たちに囲まれて腸が千切れそうな程笑った時だってあった。
「ううん。そんなに辛いものでも無いと思う」
そう答えるて見れば、矛盾してるじゃねえかと自分自身に呆れ、少し笑えてきた。
「へえ〜…そっかぁ。じゃあシオンはどうしたいんだろうね」
ナナは微笑みながらそう聞いた
「…わからない」
紫音はそう答える他なかった。
ナナはゆっくりと紫音の頭を撫でてそれを聞いていた。その姿はまるで弟想いの兄そのものであった。
「じゃあシオン、ちょっと今までを振り返ってみよう。過去から今にかけて色んな事を見に行こう。大丈夫。俺も一緒にいくからさ」
今までを振り返る?
色んな事を見に行くって、言われてもどう言う事だかハッキリとはわからない。
でもなんだか面白そうではある。
そう思えた。
そう思えたから、差し出されたナナの手をそっと取った。
「そうこなくちゃ」
キラキラとした笑みでナナは紫音の手を引いた。
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作者名:ドヤ顔ポテト | 作成日時:2021年2月26日 0時