風柱の愛した人は鬼に連れてかれて鬼と婚約したらしい

30【玄弥side】 ページ32

何ヶ月か前








十六夜の鬼が出たって時、俺はほかの任務で行くことが出来なかった





帰った時には兄貴が怪我して眠ってて






Aさんも行方不明になってるらしくて、呆然とするしか無かった




お館様からAさんの捜索命令が出されて、俺は必死に探した






任務の終わった帰りとか近くの村や町によってみたり







鬼に捕まってるなら、見つけるのは難しいことかも知れない。でも、もしかしたらって思って探し回った








そしたら小さな町にAさんに似た人が歩いてるのが見えた




髪型、服装など雰囲気も違っていて最初は戸惑ったけど、少しずつ距離を近づけるとやっぱりAさんだった







手を掴んだ時、振り返ったAさんはびっくりしてた





探した甲斐があった。ほんとに見つかってよかった。






そう思ったのに、Aさんは帰らないって頭を振った









みんな待ってるのに、兄貴だって心配してる








でも帰ることはしないと、Aさんは断った








首を降った時、揺れて光ってるので気づいた簪








どうして兄貴から貰ったやつを付けていないんだろう。




兄貴から貰った時、俺に嬉しそうに見せに来てくれたあの白い簪は…？






ずっと付けていたのに、消えてしまっている。





でも、そんなこと聞く余裕もなく、早く去ろうとするAさん









説得しようとしたのに、Aさんにはやっぱりかなわなくて、何も言えなくなった








『ごめんね玄弥くんのお姉ちゃんになれなくて。お姉ちゃんになりたかったなー。なんて』







そう言って悲しそうに笑うAさんに胸が痛んだ









俺だって、いつか兄貴と夫婦になってくれる人なんだろうなって思ってたのに、姉ちゃんになって欲しかった人なのに…









・









・







離れていくAさんをただ見ることしか出来なかった







俺の足が動いてくれなかった


声も思うように出てくれなくて、ただ口をぱくぱくさせることしか出来なかった





俺は、兄貴の大切な人さえ守れねぇのかよ。









兄貴が苦しんでるのを見守ることしか出来ねえのかよ。









玄｢…A…さんっ｣








何とかして声を出した








小さくなるAさんに聞こえるかわからないけど、頑張って声を張り上げた。





逃げてもまた、俺は追いかける。兄貴とAさんに幸せになって欲しいから









だから…

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