月がきれい。2 [ Ren.M ] (ページ36)

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蓮 side

病院に着きいつも通り
Aの病室に向かうと
Aがいない。

えっ？と思って病室の外の名前を見ても
しっかりAの名前が書いてある。

どういうこと？

と思いながら立ち尽くしていると

｢蓮くん？｣
聞き覚えのある声の方を向くと

Aのお母さんがいた。

｢あの、Aは？｣
｢Aは今、、手術中｣
｢えっ？｣

状況を把握出来ず落ち着かない俺に
Aのお母さんは経緯を話してくれた。

｢何でかは本人しか分からないんだけど
階段でコンビニに行ったみたいで
それで帰りに階段で足滑らせて
頭打っちゃって｣
｢命には別状ないんですか？｣
｢うん、お医者さんが言うには大丈夫みたい。
ただ、、しばらく意識ない状態になる｣

意識ない？

よりによって誕生日に？

嘘でしょ？なんかのドッキリ？

そう思わずにはいられなかった。

2時間経ってもAは手術室から出てこない。

｢蓮くん明日も仕事でしょ？
何時間かかるか分からないから帰っていいよ｣
とAのお母さんに言われても

Aが目を覚ますまで

居てあげたい。

頑なに帰らない俺に

Aのお父さんはしっかり目を合わせた。

｢蓮くん、Aを大切に想ってくれてるのは
凄くよく分かった。娘をそこまで想ってくれてありがとう。でも、蓮くんがこのまま自分のことで仕事出来ないのはAも悲しいと思うんだ。
目を覚ましたら連絡するから
だから娘の為に帰ってくれ、｣

俺は｢分かりました、、、また来ます｣
と言って病院を出た。

Aの両親がいる手前

気を張っていたのか

帰り道涙が止まらなかった。

しばらくすると雨が降ってきた。

傘なんか持ってない。

渡すはずだったプレゼント

観せるはずだった動画

祝いたかったこの気持ち。

行き場がなくて

ただ泣くしか無かった。

思わずしゃがみ込んだ俺の前に

誰がか立って傘に入れてくれた。