JK-4 ページ27
言いたかった言葉を言えて、力が抜けてしまった俺に、Aさんが、ふ、と思わずと言った感じで小さく、
『だと、良いんだけどね』
って。
どういう意味？って聞く前に、俺の方を見て、小動物みたいに首を傾げて
『アイドルって、寿命あるって聞いたんだけど、ほんと？』
て聞いてきた。
寿命？
アイドルって、死ぬの？
「誰が言ったの？」
『テヒョンア』
テヒョンア？
テヒョンイヒョン、会ったこと無いって言ってたのに、なんで呼び捨て許してるの？
て言うか、なんか、親しげな雰囲気じゃん。
どれにどうして不満を感じるのか、ちょっとわかりたくないけど。
「…俺はジョングクさんで、テヒョンイヒョンはテヒョンアなの？不公平さ半端ない」
『いいですよ、ジョングクさんとはあまり仲良くなりたくないんで…』
「なんで？」
『気を許したらすごく調子にのって振り回されそうなんで…』
「俺一応、目上の人への礼節とか叩き込まれてんだけど」
『ちょくちょく敬語を忘れる人は信じない主義です』
「オー、推察力…」
帰り間際、ドアを出ていく時にちょっと振り返って、
「Aさん、さっきの『だと、良いんだけど』って、どういう意味ですか？」
Aさんはきっと、聞き流してほしかったんだろうけど、俺はあえて問い返した。
丁寧に。
そしたらAさんは、ちょっと考えてから、
『初対面で、こんなに年上を敬わない人に、教える必要性を感じません』
そう言って顔をしかめて、べー、と舌を出した。
くそ、
かわいいじゃん。
俺も、ヌナ呼び許してもらえなくても、せめて俺を呼び捨てにしてくれるくらい仲良くなりたいって、思っちゃったじゃん。
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作者名：フネ55
| 作成日時：2022年12月3日 8時
