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「マンドゥすぐ作れるように、タネは仕込んどいたから」
『えっユンギすごい』
「お前包むの得意?」
『任せろよ。プロ級だぜ』
「Aが器用なのは分かってるよ」
マンドゥが食べたい、と言ったのは俺だけど、作るところからやりたいと言ったのはAの方だった。
結果的に、和気あいあいと二人して、楽しく作る作業ができて。
なんだ、俺の勘違いだったんじゃないかと、Aが来るまでの不安なんか無かったみたいに、自然体の俺に戻っていった。
Aといると、いつもあの、ソウルに出てきたばかりの俺に戻る気がする。
なんだってできるって、
やってやるって、
そんな気持ちに溢れてた俺。
街ん中を普通に歩いて、誰かに追いかけられこともなく、変装とかSPとかそんなの無しでどこでも行けた俺。
今の環境が嫌なわけじゃない。
むしろそれは十分に承知して、ここまで来たから、全然かまわない。
それでも、外での人の目をずっと気にして過ごす生活が、大歓迎なわけじゃないじゃん。
SUGAでいる俺を、24時間365日、いつでも演じていられるわけもない。
だから、時々、戻りたくなることもある。
何者でもないミン・ユンギだった頃の俺に。
Aは、
『ユンギ』
って俺の名前を呼ぶだけで、
簡単にそこに連れてってくれる人だ。
だから俺は、
多分一生、
Aを手放すことなんかできない。
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作者名:フネ55 | 作成日時:2022年12月1日 19時