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店の品揃えはすごかったけど、買うには懐が寂しかったのでその日はそのまま帰って、バイトの給料日にもう一度、意を決してドアの前に立った。
欲しかったものはその時の俺が買うには、まだ高価な機材だったので、本当に勇気とへそくりを出し切って買いに行ったんだった。
なのに、Aは
『これ、パソコンのスペック相当積んで無いとろくに動かないから、やめといたほうが良いっすよ』
て。
そんなこと分かってたし、俺が持ってるパソコンがスペック足らずだって足元見られて馬鹿にされたんだと、かっとなった。
「大丈夫です」
『でも』
「ほんとに」
後には引けないと意地になっている俺に、Aは困ったような顔をして
『…うーん、じゃあ、レシート無くさないでくださいね。返品交換、対応できるんで』
そう言って、あっさり丁寧に梱包して売ってくれた。
店の外に出た俺は、やっと買えた機材が嬉しいはずなのに、なんか微妙な気持ちのまま宿舎に帰った。
結局。
Aの言う通り、手持ちのパソコンで試した結果全然動かなったことに絶望して、次の日すごすご返品に行くことになった。
『らっしゃっせー…あ、お客さん』
「…ドーモ」
『今日は何をお探しですか？』
カウンターに頬杖ついて聞いてくるその顔に、昨日の紙袋を突き付けた。
「…返品交換、できるんですっけ」
『ああ、もちろん！しますか？』
にこ！と嬉しそうに笑ったのでびっくりした。
「やっぱり、難しかったんですね〜。わかります。私も最初試して悔しかったんで。あ、それの類似品でいい感じのやつあるんですけど、そっち試します？」
ぐいぐいくるじゃん。
「地下の防音スタジオにちょうどいい低スペックなパソコンもあるんで、試しますか？」
いい奴じゃん。
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作者名：フネ55
| 作成日時：2022年12月1日 19時
