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「誰かのど飴持ってない？」
レッスンルームに、しゃがれてひどい喉風邪をこじらせたような声がして、俺は思わず椅子を倒す勢いで立ち上がって、声の方向をガン見した。
ガターン、と結構な音がしたのと俺の眼力にビビったホソギヒョンが、怯えたように後ずさった。
HS「何グクこわいんですけど。俺、殺されるの？」
俺は声の主がヒョンだと確認した後、なんでも無いと首を振る。
倒れた椅子を引き起こしながら、ふとジンヒョンを見ると、なんとも言えない目で俺を見ていて、思わず顔を伏せる。
あれから、Aに似たような声が聞こえると、耳が拾ってしまうようになってた。
最初の内はすっ飛んでいって大道具だろうが音響スタッフだろうが捕まえて顔の確認をしてしまっていたけど、風邪症状のあるような人のところに迷わず近寄っていく俺を、ヒョンたちが許すわけもなくて。
今は、声のした方に顔を向けて、確認するくらい。
あの夜からもう、気付けば3ヶ月も経っていた。
でも俺は、
そんなおかしな癖が付くくらい、
まだ、ずっと、
諦めずに、Aを探してる。
ジンヒョンは、最初こそ俺の諦めの悪さに良い感情を持っていなかったみたいだけど、最近はちょっと、違うみたいだ。
いつものようにAと違う人を見て、俺がため息を吐いてたら、つん、とひじが何かに当たった。
見ると、俺には視線を向けずに、ヒョンがひじを当ててきて、なんだよ、と強く当て返したら、
SJ「認めるよ。応援しないけど」
て。
SJ「お前、本気じゃん」
そうだよ。
たった一晩のことじゃない。
ちゃんと、その後も付き合うつもりでいたんだって。
俺は、
一晩掛けて、
じっくりAに恋をしたんだから。
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作者名：フネ55
| 作成日時：2022年11月28日 0時
