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S「アー、申し訳ないんですが、ホテルまで戻れますか?」

セジンヒョンも俺たちと同じことを思ったはずなのに、動揺は一切見せずにAに話しかけている。

Aはヒョンの言葉にぎょっとしたような声で、

『あ、いや、無理です。もうすぐフライトになります』

それからヒョンに尋ねられるまま、行くのはアメリカで、妹の結婚式に参加するということ、もうずっと前から決まっていて、会社には連絡済みだと、ためらいつつもこちらが分かりやすく答えていく。

そのすごく知的でハキハキした感じに、俺の記憶の中の人とは全然違っていて、昨日のAとは別人なんじゃないかって思えてきた。



聞き覚えのある声以外は、俺が抱いたAとどんどん遠ざかって行く気がする。

昨夜の少しおっとりした感じだったのは、酔っていたからだったとして。

合間に話した印象は、反応がいちいち面白い、少し天然なところもあるかわいい人、って感じだった。

でも、電話の向こうの人は…天然と言うと言うよりも、



意思のしっかりした、

仕事のできる、

大人の女性って感じ。




俺は思い出せば思い出すほど、昨晩過ごしたAと、スピーカーから聞こえてくるAとのギャップが埋められなくて、混乱した。





声だけじゃ、不安になる。



会いたい。






会えばきっと、全部上手くいくのに。

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作者名:フネ55 | 作成日時:2022年11月28日 0時

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