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「お前、何言ってんの」
ほんと、何いってんの?
天使なの?
『え、だいじょうぶです、もう少し休めば』
私は動けない身体で慌ててお断りするが、また、はー…と今度は長めのため息が。
「部屋に戻りたいだけですよね?自分で歩けないんですよね?」
声の方向的に、私に聞いたのか、あひゃ声の人に聞いたのか判断しかねて黙り込む。
「お前がやる必要ある?」
「ホテルの人に連絡して、その人がここまで来るの待ってるより、俺が連れてった方が早く無いですか?8階まで降りて、部屋に押し込んで、終わり。違いますか?」
「いつからそんなにせっかちになったの?このマンネはぁ!」
「だから〜、あーもう、こんな話してるのが無駄です。ヒョンはいいから先に行って下さい」
押し問答を無言で見守っていたら、誰かの背中におぶわれたような感触があって、ひょいと体が宙に浮いた。
ああ、なんていい人なんだ。
全部聞こえてるし、わかってるのに、何一つできずに、本当に申し訳ない。
『本当に、申し訳ありません』
持ち上げられたて少し気持ち悪い。ウプ、となりながらも、優しい背中に誠心誠意謝罪した。
「ちがうでしょ」
「ありがとう、でしょ?」
なんて育ちの良い人なんだ。
見も知らない怪しい酔っぱらいに、なんて優しいんだ。
『…ありがとう、ございます』
謝るよりも、お礼を言う方がよっぽど緊張するのはなぜだろう。
私の言葉に、その人は
「ん」
とだけ答えて、歩き出した。
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作者名:フネ55 | 作成日時:2022年12月7日 14時