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Aが教室に滑り込むのと同時に、担任の物理教師、中野幸治が入ってきた。
寝癖の残ったボサボサ頭に相変わらずのジャージ姿。
フレミングの左手の法則やエネルギー保存の代わりに、身だしなみってやつを教えてやりたい。
「はい、新学期。進級、おめでとう」
早口で話し始める中野の声を聞きながら、カバンから教科書を机のなかへと移していると、ノートの間に挟まった今朝の手紙に気がついた。
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Aは手紙を抜き出し、眺める。
「今日はまず始業式、午前授業………そして、お前達に紹介したいヤツがいる。連れてくるから待っててくれ」
そう言って中野が出ていくと、転校生が来るのかもと教室がざわつきはじめる。
手紙…読んでみようかな……。
Aは封筒を開けた。入っていた便箋は10枚以上。
思っていたよりも枚数は多い。
重ねられた便箋の、最初の1枚目をAは読み始めた。
『佐藤A様
高校2年生の私、元気ですか?
私は10年後の未来から手紙を書いています。
あなたにどうしても叶えてほしいお願いがあ
るからです。』
って何これ……誰かのイタズラ??
もう1度封筒をを確認する。
差出人の『佐藤A』の文字____。
Aはふたたび便箋へと視線を戻す。
『私と同じ間違いを繰り返さないように
この手紙にこれから起こる出来事と
その時に選んでほしい道を書いておき
ます』
『4月6日。
朝、目覚ましをかけ忘れて人生初の朝寝坊。』
ウソ!
なんで?!
どうして知ってんの?
Aは驚きつつ、次の文章を目で追う。
『6組に東京から転校生がやって来る。
名前は山田涼介。』
転校生………?
やまだ……りょうすけ……??
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作者名:ありここベリー | 作成日時:2017年5月21日 14時