おひとのといき〜OHITONOTOIKI〜【合作】

僕と消えゆく吐息、カッターと彼女 ページ25

僕は
彼女が「生き」ていることをこの上なく憎み、
彼女の「息」をこの上なく愛していた

彼女に対する複雑すぎる気持ちに、僕は為す術もなく、ただただ涙が止まらなかった

「ゔゔぅ、ゴホッゴホッ、ゔゔぅ、う"わ"ぁぁぁぁん゛」

こんなに泣いたのはいつぶりだろうか
彼女を探した時だってこんなにも泣かなかった
ここまで愛する人(吐息)もいなかったし、ここまで憎む人もいなかった

ようやく愛する相手が出来たのに…

そう思うと涙腺が緩む

もう、涙も枯れてきた
僕は何も考えることが出来ない
いっそ、彼女の吐息だけを残して彼女をこの世から消え去ることはできないだろうかと考える

彼女を見ると、殺めたくなってしまう…
殺りたい
殺りたい
殺りたい
殺りたい
殺りたい
やりたい
やりたい
やりたい
ヤリタイ

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁあ！」

殺してはいけないと、頭を掻きむしり自分の気持ちを取り戻そうとするが、なかなかおさまらない

しかも、その時彼女が訪ねてきた

皆、不運だった

僕は気持ちが抑えられないまま、凶器を手にしてしまった
僕が左腕に傷をつくるために使ったカッターだった

これもまた、一瞬だった

彼女は真っ赤な血で弧をえがきながら、後ろへ倒れていった

僕は我にかえり、彼女を殺したという事実を眺めていた

憎い彼女を殺したという達成感と、愛する吐息を失ったという喪失感にかられ、

僕はまた涙を流した
枯れきっていたはずなのに、涙が流れてくる

前のような複雑な心情からくるものではなく、ただ彼女の吐息を失ったということだけに対しての涙だった

彼女はあまりにも呆気なかった
彼女は死んでもなお、美しかった
もう一度、あの吐息が欲しかった

もう彼女を殺した事実とあの吐息が戻ってこない喪失感に浸りながら、動かなくなった彼女を見つめていた

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