吸血鬼のいる町。vampire`s town.【歌い手】 (ページ9)

今日:3 hit、昨日:3 hit、合計:18,471 hit

story7:名残と吸血鬼の暴走ページ9

「君を殺すのは嫌だよ。というか、その話をする前に君の努力を尊重して、すべてを話してあげよう。」

「否、別に構わない。とっとと自分を殺せ。」

すると、吸血鬼はつまらなそうな顔をして「まぁいいや。」と言って、

僕を噛んだ。

背後から噛まれているが、何も感じない。

彼の噛みはソフトなのだ。

そりゃ、そらるが一瞬で死ぬのも無理はないか。

噛まれて倒れる瞬間、僕は机においてあった紙を地面に滑らせてわざと落とした。

倒れて頭に衝撃が走る。

目が霞む。すると彼は覗き込むようにして僕の目の前に現れて

「さようなら、名探偵さん」

と言った。

それが僕の聞いた最期の言葉だった。

吸血鬼Side

仕方がないか。だって彼は知りすぎたんだもん。

フランス語辞典を開けようなんて。

それじゃあ、正体がバレてまうではないか。

月の下。

窓から見える月光が眩しく感じた。

「いつか…Aも殺しちゃうのかな。」

素朴な疑問を自分の投げかける。

無論、答えは返ってこないが。

月夜の下、自分と美しく死んだ天月君…書斎にて。

何と美しく切ない舞台(シチュエーション)なのだろう。

「促してくれてありがとう。"共犯者(コンプリス)"。」

本棚からひょっこり顔を出す、少女。

「いや…いかさん。」

「どういたしまして。吸血鬼様に使えるなんて幸せですから。」

「君は噛む前に永久服従を誓ってくれた。だから、これは当然なのだよ。
分かってくれるかい?」

いかさんは不気味に笑う。

「そうよね。」

「でもね。」

自分はしもべを基本欲しがらない。

立場逆転を恐れているから。

いかさんは永久服従を誓ってくれた。だがもう用済み。

「さよなら、我がしもべ。」

「え?」

いかさんの戸惑いの声と噛まれた悲鳴が交差して汚れた声になった。

それは日本語では表すことが出来ない。

彼女は泣きそうな声で言った。

死にかけの鳥の足掻きのようで非常に滑稽であった

「なんでぇ…殺す…の。」

自分は冷酷に言った。

「ゴメン。用済みだったから。」

すると、彼女はため息をついていった。

「あの時に殺させれといたらよかった…」

静かに目をつぶっていく彼女を僕は天月君とは違い、ただただ見下すだけであった。