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「ん、これ綺麗になったね」
『……どうも』
裏に戻って準備を終えたであろう樹さんは私の包み終えた商品を見てそう言った。
それこそ褒められることなんて最近なかったからまたちょっと嬉しかった。
そのあと急にお客さんが沢山来て忙しくなって話すことも目が合うこともなかった。
強いて言えば業務的な会話くらい。
「樹さんくると助かるけど、忙しくなるからプラマイゼロだよな」
「確かにそれは言えてるわ」
そんな会話を聞いて、なんか納得するかもなんてもうそろそろアップになる時間を指す時計をみて身の回りを綺麗にした。
「樹さーん、俺そろそろ休憩欲しいんすけど」
「は？まじ？今から？」
「さすがにもう4時間を休憩無しではキツいっすよ」
「まじ腹減りましたもん」
そんな会話を聞いて辺りを見回すとホールに1人、レジに1人、厨房に私、樹さんと先輩。
時計が刺してるのは私がアップする時間。
バチッと目が合って樹さんが申し訳なさそうに近づく。
「杭瀬さん、まじでごめん。今から1時間伸ばせたりって…」
『………わかりました、1時間なら』
「まじ？！ありがと、助かる！ほんっとごめん！」
「じゃあ休憩いってきて！ダッシュで戻れな！」と表に聞こえそうな声でいうから、少し笑ってると樹さんがかがんで目線を合わせてくる。
「無理だって思ったらすぐ俺に頼って」
「そんな俺、ヤワじゃないから」
そこからは本当に忙しくて地獄みたいだった。
けど最初の言葉通り樹さんは私のできないところをたくさんカバーしてくれた。
「樹さん休憩戻りましたー」
「おま、ラッシュ終わった途端くるとかどんな運の持ち主だよ」
「え？」
「まあいいわ。杭瀬さん、アップで」
『あ、はいっ』
打刻を打って「お疲れ様です、」と厨房を抜けていって裏へ。
バイト着のままきたから着替える必要のない私は上着だけ着て髪の毛をとかす。
すると冷蔵庫に資材を取りに樹さんが裏に来た。
「お疲れ様〜、いやぁまじ忙しかったな」
『ですね』
『…じゃあ、お疲れ様です』
「はい、お疲れ様」
「あ、杭瀬さん」
『？はい』
「ほんとにありがとう。マジ助かった」
「じゃあ気をつけてね」その言葉を背に裏口をあけた。
扉が閉まる音がして座り込み、息を吐く。
『…なに、これ』
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作者名：野良猫 。 | 作成日時：2022年11月17日 11時
