アイロニックセオリー (ページ11)

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「うわ、んーまっ！！！」

目の前にやられたお酒はいつのまにかなくて、代わりに聞こえてきたのは樹さんのそんな声。

(助かった………)

　「ちょっと樹くんなんで飲むのよー」

「長谷川さんこそ、なんで飲ませるんですか」

「そろそろ水飲んどいた方がいいっすよ。明日のためにも」

へらっとわらうけど、どこか怒を含めたような笑いに私まで背筋が凍りそうになる。

「あと、杭瀬さんも明日のためにそろそろ帰ろ」

「いくら門限いけても危ないから」

携帯の電源をつけると20:58と表示されていてもう開始から3時間経つのかと樹さんの言葉に頷いた。

あまり中身を出していないカバンのチャックを締めて靴を履いていると隣に人影ができた。

『…樹さん？』

「一緒に帰ろ、危ないし」

『…また子供あつか、』

「ほら、早く立ち上がって」

『…』

「じゃ、俺らもう帰るんでみんなも程々にしてくださいねー」

『あ、のっ…ありがとう、ございましたっ』

　「気をつけてねー」

　「また集まりましょうね」

みなさんのわいわいした温かい送り出しに心がポカポカしているのに、体は冷える。

この季節だからって夜に油断してたみたい。

「煙草くさいかもだけどこれ」

『え』

「見てるこっちが寒い」

『…それ、そのままお返ししますよ？』

「おい今俺をガリガリなくせに何言ってんだこいつみたいな目でみただろ！」

『見てないです、見てなっ…んふっ』

「おま、ほんとに…」

『っはは！あははっ。だめだ、おもしろ…ふふっ』

「…」

「Aちゃん、笑った方がかわいーよ」

『…え』

「、家どこだっけ？こっち？」

『……△△町、です』

「じゃあこっちの方か」ってスタスタ歩いていく樹さんとは逆に、私はそこから動けなかった。

″ 好きになっちゃダメだよ ″