知らぬが仏 ページ36
静かになった部屋に、
俺と照史のぜぇぜぇとした息だけが響く。
それは喉に液体が絡んだような乾いたもので、
実際、息をする度に鉄分の匂いが鼻を抜けた。
血液が気道を逆流するのは
内臓が傷ついている証拠、やったっけ。
こんな時なのに、昔医学の授業で習った知識を
思い出すくらいには冷静だ。
そっか、俺の内臓傷ついてるんか。
まぁ、腹撃たれたもんなぁ…
と、危機的な自分の状況でさえも
客観的に把握することができた。
なんとなく、思う、分かる。
自分の呼吸が止まるのも、時間の問題だと。
目を薄く開けると、
うつぶせになって倒れている神山さんが見えた。
ピクリとも動かないその様子は、
魂の抜けた人形のようだ。
神山さんが目を開けることはもうないだろう。
終わったのだ、全部。
橙「……じゅん、たくん、大丈夫？」
黄「……わからん。たぶん…むり」
橙「…はは、そうやなぁ、…俺もかなぁ」
壁にもたれた照史を横目で見ると、
腹を押さえているその手は赤く染まっていた。
黄「…照史、よかったな」
橙「…えぇ？なにがぁ」
黄「おっきい記事、書けるやん。
人が消える屋敷の真相！って…」
橙「ほんまやなぁ…。
でも、その前に…
淳太くんのお手柄で新聞に載るんちゃうか？
一応、難事件解決やん」
黄「…そっか……」
そうやで、と照史が力なく笑う。
このままここで、
力尽きるのを待つだけなのだろうか。
携帯はこの屋敷に辿り着くとっくの前から圏外で、
連絡を取る手段もない上に、
俺たちはもう動くこともできない。
橙「…誰か、俺らのこと
見つけ出してくれへんかな…」
黄「誰かって…もう誰もおらんやろ」
橙「……重岡さん、無事かなぁ……」
黄「…重岡……あぁ、おったなそういや……」
変な奴やったな、と閉じた視界で
彼の顔を思い浮かべる。
俺たちを最初に出迎えてくれて…
屋敷の噂のことを知ってる上で、
その実現を望んでて。
殺される状況にあっても飄々としてて、
逃げ道を俺たちに教えたりしてきて……。
まぁ、彼の言う逃げ道は
実質行き止まりのようなものだったけれど。
＿＿＿あれ、
一つ、違和感から疑問が生まれた。
なぜ、重岡さんは
この屋敷の構造を把握している＿＿＿？
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豆乳もち(プロフ) - 最近『シビュラ』という曲にハマったんですけど、歌詞がどこかで見たことあるな〜って思ったら2年前くらいに読んだこの作品でした。曲を聴く前と聴いた後で読むのではまた違った面白さがありました！情景や発言に歌詞が散りばめられていて感動しました！ (7月9日 16時) (
レス) id: c565488b09 (このIDを非表示/違反報告)
梅子(プロフ) - 緑翠 @かぁさん» ありがとうございます〜〜！！どの言葉も嬉しすぎます書いて良かったです^ ^ただグロいだけじゃなくて神山さんのある種神聖な綺麗さは丁寧に書こう...！と思っていたのでドンピシャで読み取ってくださりとっても興奮していますありがとうございます！！ (2021年3月1日 11時) (レス) id: 15f3f2738e (このIDを非表示/違反報告)
緑翠 @かぁ(プロフ) - すっっっっっごい面白かったです…！！まるで一本の映画を見終わった時みたいな…。残酷ですがとても儚いような…これから赤色さんはどうするのか…とか色々気になってしまいます。素敵な作品を読ませて頂き、ありがとうございました。 (2021年2月26日 23時) (レス) id: 57d00871fa (このIDを非表示/違反報告)
梅子(プロフ) - 麗さん» ありがとうございます〜！藤井さんと�霤弔気鵑砲録修渓�なさしかありませんがそう言っていただけて嬉しいです！(笑) (2021年2月18日 16時) (レス) id: 026a6b186c (このIDを非表示/違反報告)
梅子(プロフ) - ひかるさん» こちらこそ読んでいただきありがとうございます！わああ凄く嬉しいですこれからも頑張ります（ ; ; ）！！ (2021年2月18日 16時) (レス) id: 026a6b186c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：梅子
| 作成日時：2020年11月25日 18時
