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「アンタ、ここの家の娘さん?」


「そうです。井上Aですけど」


「ああそう。アンタの親、逃げたよ」


「は?」


吸っていたタバコを地面に捨て、革靴で踏み潰しながら淡々と言う。


逃げたってなに。脳の処理が追いつかない。


「簡単に言うとさ、アンタの親は俺らのとこから金借りてたの。
でも支払い期限過ぎても全然返さねえし。かなり催促してたんだけどさ。
いつか飛ぶんじゃないかと思って、前々からもしそんな舐めたことするなら娘は置いて行けよって言ってたの。
意味わかるでしょ?」


へらりと笑って聞いてくる。


背中に嫌な汗が伝った。意味なんて、分かりたくない。
分かりたくないと思ってしまった時点で意味は分かっていた。



「いつも電話したら出るのに今日は出ねぇの。だからわざわざ家まで来てやったの。
そしたらこれが玄関に置いてあってさ」


小脇に抱えていた紙袋を見せてくる。そこには田中さんへと書いてあり、中身を見ると一万円の札束が5つ入っていた。

田中、というのはこの男のことだろうか。



「500万じゃ全然足りねぇんだけどね。しかもちゃんと俺が回収できたから良かったけど、盗られたらどうすんだよって感じ。
近所の人に聞いてみたら昼前にトラックに荷物積んでふたり揃ってどこかに出かけたの見たって言うしさ。
夜逃げじゃなくて昼逃げかよって」


けらけら笑ったかと思えばすぐに真顔になって私をじっと見つめてくる。



「売られたんだよ、アンタ。可哀想だけどね」



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ちあき(プロフ) - yk717miraiさん» コメントありがとうございます。私が書いたお話にそこまで感情移入してくださって嬉しいです(〃ω〃) (2019年8月12日 11時) (レス) id: e4fa195aef (このIDを非表示/違反報告)
yk717mirai - 捨てて行った家族にバチが当たればいいのに。幸せになるべからず!! (2019年8月12日 6時) (レス) id: 2f50dbd382 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ちあき | 作成日時:2019年8月11日 21時

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