今日も仲良く仲違い(2) ページ15
＊
キスというその言葉に俺はまた当時のことを思い出して頭を抱えそうになった。
確かにあの後少し気まずかったが、言われてみればあんなものはただのおふざけであり挨拶のようなもので、俺たちが仲の良い親友であることに変わりはない。
一旦そんな風に割り切ってしまうと、あれだけ取り乱していた俺でさえも案外引きずることはなかった。
それより何故今その話を蒸し返す？
「…そのことはもういいって！そもそも俺はAの為を思って言ってるだけッスよ」
「俺の為？ラギーは優しいね」
そう言ってAは少し微笑んだもののその言葉には棘があった。
「自業自得だけどさ、ラギーと過ごす時間が減って俺はすごく寂しいよ。でもそう思ってるのは俺だけみたいだ」
「そんなの俺だって、」
「そりゃ手のかかる奴がいなくなった方が楽だよね」
「はあ？だから、なんでそうなるんッスか！子供みたいに拗ねないでくださいよ…あーもう、めんどくさいな」
何気なく放った一言にAの肩が少し揺れた。
やばい、と思ったが時すでに遅し。
「ごめん、もう俺のことは放っといてくれていいから」
「ちょ、今のは違う！そういうつもりで言ったんじゃ、」
「ラギーの」
「…俺の？」
「ラギーの馬鹿！！」
「うぎゃあー！？」
Aは俺の耳元でそう叫ぶと同時に俺の尻尾を両手で力一杯握り締めた。
それはもう握り潰す勢いで。
突然の衝撃にみっともない悲鳴を上げる俺を無視してAは教室を早足で出ていく。
俯いたその表情を伺うことはできなかった。
「ったく、Aのヤツ…！」
Aは一見ポーカーフェイスのようだがかなり子供っぽいところがある。
だけどあんな風に怒ったところは久しぶりに見た。
ただでさえ厳しく監視されて苦しんでいるところに俺は追い討ちをかけてしまったみたいだ。
こんなことなら優しい一言でもかけてやれば良かった。
しかし今更うじうじ悔やんでも遅い。
俺はモヤモヤした心を一掃するようにふうっと息を吐いた。
「…こういうの苦手なんスよねぇ」
ふと教室に備え付けられた時計を確認するともう次の授業が始まる時間だ。
しかしAはあれっきり戻って来なかった。
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しろ - 今更ですが素敵な小説を発見してしまった…！！もう何度も読み返しています。二人の微妙な距離感がもどかしくて可愛らしい！！ (2022年9月4日 8時) (
レス) @page19 id: 694670944a (このIDを非表示/違反報告)
ゆきな(プロフ) - んふふ…ちゅーで呪いが解けるってﾆﾔﾆﾔしますね！ (2020年6月13日 10時) (レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：青井 | 作成日時：2020年4月12日 19時
