苦い顔で ページ5
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「――土方さん」
用意できました、とあたしが副長室へ顔を出したのは12時30分を少し過ぎたあたりのことであった。
今日仕事のある隊士は普段に比べて少ないし非番の隊士も大部分は潰れているしで食器洗いや洗濯物が早く済み、いつもより少し早い休憩入りだ。
覗き込んだ先のその部屋では、土方さんが黙々と仕事をしていて。
「あァ、悪りィ。行くか」
「さっき休んでてくださいって言ったじゃないですか。昨日遅かったんですから」
「休んだ。時間が空いたんで消化してただけだ」
オラ行くぞ、と話を打ち切られてしまう。……まったく。
傍らに置いてあった羽織を羽織った彼が行かないのかとばかりにあたしを見下ろした。この人の仕事バカまでは鐘の音も落とせなかったらしい。土方さんに続いてあたしも廊下を歩き。
「――めかしこんでるな」
「え?……あぁ、初詣ですから」
流石に仕事用の着物では格好がつかない。そんなに良いものではないけれど浅緋色に控えめな柄があしらわれたお出かけ用の着物を着てきていた。もちろん羽織も羽織っている。この季節の必需品だ。
久しぶりに丁寧に結った髪を気にしながら「変なら言ってくださいよ、おめかしから遠ざかりすぎて勝手がわからないんです」なんて笑った。土方さんは少し言いづらそうに「似合ってる」と。
「どうしてそう人を褒めるときに苦い顔になるんですかね、土方さんは」
「笑うな。さっさと行くぞ」
結局また仏頂面となってしまった彼へクスクスともれるあたしの笑いはおさまらなかった。不機嫌は加算されていくようで、土方さんの眉間も大変なこととなってゆく。
そのあたりでようやく笑いを飲み込んだあたしは、彼の横に並んで足を進めながら、愉快な人だと横目で彼を見上げたのだった。
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ユイ - 完結おめでとうございます。不器用なりにも優しさを見せてくれる土方さんにキュンキュンされっぱなしでした、最高です! (2019年10月19日 10時) (レス) id: 7837a845b7 (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - 完結おめでとうございます。とーってもおもしろかったです! (2019年8月10日 18時) (レス) id: a12faa1c0b (このIDを非表示/違反報告)
鳥雫(プロフ) - 良かったですよおおおおおおおお!!!ミツバさんを入れつつ夢主とも恋愛させる、ってのが本当良かったです!!これからも応援してます!! (2018年1月15日 1時) (レス) id: 40fe2f910d (このIDを非表示/違反報告)
ありす - 完結おめでとう!面白かったです! (2017年1月29日 15時) (レス) id: f707c0d1ab (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - 完結おめでとうございます!いつも楽しく読んでもらってました!新作頑張ってください(*^◯^*) (2016年11月13日 12時) (レス) id: 6c50a9e769 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年11月5日 23時