中々可哀想 ページ4
「その言葉そっくりそのまま返します。土方さん今日非番ですよね?」
「目ェ覚めちまったんだよ。……ったく、こんな時間から働いても冷えるだけだぞ」
「冬ですから、冬。…というか新年明けましておめでとうございます」
「そういやそうだったか」
そういえばで済ませられてしまう新年の訪れも中々可哀想なものである。まぁ宴会明けなんてこんなものだ、いつも皆ぽやっとした顔をしている。
「今年も初夢見る余裕がありませんでした。夢どころか昨日どう寝たのかも曖昧で」
「昨日?」
「記憶がここでうたた寝したところで途切れてるんですよね。土方さんはきちんと部屋に戻れました?」
「……まァな。酒量のセーブくらいはできる」
きっと昨日自力で自室へ戻れたのなんて土方さんくらいだろう。流石副長は隙がない。
そうなっても困るけど、ベロベロになってどうしようもない土方さんなんてのも見てみたいかも、と内心笑みをこぼしつつあたしは酒瓶から手を離し。
「あたし、お風呂沸かしてきますね。そろそろ誰か起きるかもしれないし」
「新年早々忙しいな」
「女中ですから」
それじゃぁ、と廊下へ足を踏み出した。突き刺すような寒さに負けまいと少し早足で歩を刻んで、4,5歩めに差し掛かったとき。
「――あ、ちっと待て」
何か思いついたように土方さんから呼び止められた。部屋から半身を覗かせる彼へ視線を向ければ「昼に出かけられるか」なんて。
「昼休憩の間にちょっとだけとかなら大丈夫ですけど……何かあるんですか?」
「面倒事じゃねェよ。初詣でもどうだ。毎年なんだかんだ言って行けてねェだろ、お互い」
確かにその通りやれ仕事だやれ書類の処理だと毎年毎年隊士たちからの初詣の誘いに乗れずじまいだ。結局神社へ足を運べるのは2月以降となってしまうこともあって。
「わかりました。行きましょ、初詣」
今年こそはきちんとやるのもいいかもしれない。職業柄、ただでさえお正月ムードを味わう機会に恵まれないんだから。
お昼に出かける約束をして、それまで休んでてくださいと念を押して、そうしてあたしは踵を返した。土方さんとの初詣は楽しみだけれど、その前に仕事を片さねば。
まずはお風呂を焚いて隊士たちに入らせて、あたしもその後入りたいし。
こうしてはいられない、と歩を速めたあたしは、ずんずん冷気を切り裂いていったのだった。
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ユイ - 完結おめでとうございます。不器用なりにも優しさを見せてくれる土方さんにキュンキュンされっぱなしでした、最高です! (2019年10月19日 10時) (レス) id: 7837a845b7 (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - 完結おめでとうございます。とーってもおもしろかったです! (2019年8月10日 18時) (レス) id: a12faa1c0b (このIDを非表示/違反報告)
鳥雫(プロフ) - 良かったですよおおおおおおおお!!!ミツバさんを入れつつ夢主とも恋愛させる、ってのが本当良かったです!!これからも応援してます!! (2018年1月15日 1時) (レス) id: 40fe2f910d (このIDを非表示/違反報告)
ありす - 完結おめでとう!面白かったです! (2017年1月29日 15時) (レス) id: f707c0d1ab (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - 完結おめでとうございます!いつも楽しく読んでもらってました!新作頑張ってください(*^◯^*) (2016年11月13日 12時) (レス) id: 6c50a9e769 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年11月5日 23時