必然 ページ22
「…謝るなと言われても。あたしだって真選組の一端なんですから、こんなこと言ってたらダメじゃないですか」
「誰もお前に無理を強要しちゃいねェ」
「あたしの気持ちの問題です」
だから土方さんはそんな顔しないでください、と彼を安心させるように笑う。なんでもない廊下で二人してしゃがみこみながら見つめ合うというのはなんだか内緒話をしているようだなと、どこかで冷静に考えていた。――しかし。
「……土方さん?」
目の前の彼の眉間の皺は、また深くなってしまって。
苦々しいその顔にどうすればいいのかわからなくなる。どうして彼は、そんな顔をしているのか。
沈黙が廊下を包み、掛け時計が時を刻む音のみが響いた。外は寒風が本領を発揮しているらしくガタガタと窓ガラスが揺れる。――そのまま、数秒したあたり。
「―――俺は、お前を傍におくべきじゃなかったな」
その言葉は、発された。
「……はい?」
…傍に、おくべきじゃなかったとは。それは、一体。
半ば放心状態で土方さんを見上げると彼はあたしから目をそらした。そして先程掃除したばかりの壁を見つめながら「…お前にまた辛い思いをさせてるだろ」と。
また、というのはきっと昔のことを汲んでの言葉だろう。想う相手を血の匂いのする場所へ送り出さねばならない状況を作り出したことに対して、だろう。―――でも。
「時間の、問題でしたから」
「……時間?」
「あたしはどう転んだっていつかは土方さんに惚れてましたから。土方さんにそういう気持ちがなくたってきっと想い続けて、いつかは昔のことも話して、いつかはやっぱりこうなってました」
土方さんがあたしを傍においてくれなかったところで何も変わらないんですよ、なんて。…だから、それなら。
「……どうせこんなに不安な気持ちを抱えるなら、土方さんに甘えられるこの距離の中がいい、とあたしは思ってます」
今更ながら湧いてきた恥ずかしさは視線を落とすことで押さえ込んだ。右手で髪の毛をひと束耳へかけつつ、一瞬だけ土方さんの様子を伺う。どこか間抜けな顔をしたその人は「…………悪い」と。
「…なんでまた謝罪ですか、そんなのいらな、」
「着物が汚れたら、悪い」
「――は、」
――――はい?
聞き返そうとした言葉は、彼の胸板へ消えた。背中へ回った力強い腕から察するにどうにも抱きしめられたらしい。
479人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユイ - 完結おめでとうございます。不器用なりにも優しさを見せてくれる土方さんにキュンキュンされっぱなしでした、最高です! (2019年10月19日 10時) (レス) id: 7837a845b7 (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - 完結おめでとうございます。とーってもおもしろかったです! (2019年8月10日 18時) (レス) id: a12faa1c0b (このIDを非表示/違反報告)
鳥雫(プロフ) - 良かったですよおおおおおおおお!!!ミツバさんを入れつつ夢主とも恋愛させる、ってのが本当良かったです!!これからも応援してます!! (2018年1月15日 1時) (レス) id: 40fe2f910d (このIDを非表示/違反報告)
ありす - 完結おめでとう!面白かったです! (2017年1月29日 15時) (レス) id: f707c0d1ab (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - 完結おめでとうございます!いつも楽しく読んでもらってました!新作頑張ってください(*^◯^*) (2016年11月13日 12時) (レス) id: 6c50a9e769 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年11月5日 23時