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塗れる、塗りつぶす ページ16

――――――



――おかえり、お疲れ様、と粛清帰りの隊士たちに声をかけたのはほんの数十分前のこと。

19時すぎの現在、窓の外は真っ暗だ。冬の日暮れというのは早い。……何もかもが黒で塗りつぶされたそれを、あたしがぼうっと見つめていれば。




「――大丈夫か」


「…、土方さん」



向けられた声の主はその人であった。その声を聞くのが今日初めてであることに気づき内心で苦笑する。




「大丈夫ですよ。ちょっと呆けてて。――それより、お疲れ様でした」


「…あァ。屯所は変わりなかったか」


「人気がなくて少し寂しかったですけど、問題児がいない分むしろいつもより平和でしたよ」


「違いねェ」




土方さんは煙草に火をつけながらくつりと笑った。改めてその人を見つめてみるとどうにもお風呂上がりらしく。



「土方さん、もう冷えますし湯冷めしちゃいますよ」

「大丈夫だ」

「そうやって言うのは大体大丈夫じゃない人です」



外よりは多少暖かいとはいえ廊下だ。隙間風は吹き込んでくるし。

もう何度目になるかわからないこの手のやり取りをかわしながら彼を見上げてみる。――その目は、なんだか言い合いの内容に反してあたしのことを深く見つめているようで。




「……――――土方さん…?」



思わず声をかけてしまった。「どうかしました?」なんてあたしも顔に真剣味を帯びさせる。




「……別に、どうもしちゃいねェ」


「通ると思ってないもんをわざわざ使わないでください」




きっと土方さんだってあたしがそんなこと言っても信じない。事実誤魔化しは通用しなかった記憶がある。それを自分だけ見逃してもらおうなんてあたしが許すわけもなく、



「白状してください、土方さん」



彼の顔をのぞき込めば静かに視線がそらされた。
重い沈黙に耐えながら発される言葉を待つ。――すると。




「……大したことじゃねェ、ただ――わからなくなっただけだ」


「わからなく?」




観念したように言葉を吐き出した土方さん。同時に、冷えた空気を白で塗りつぶしてゆく紫煙も空中を闊歩した。

彼は頭上に疑問符を浮かべているあたしの方へ視線を合わせたかと思うと―――……




「この手で――血に塗れた手でお前に触れていいのか、今わからなくなってたとこだ」

視界の中で→←湯気の上がる、



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設定タグ:銀魂 , 土方十四郎 , 真選組   
作品ジャンル:アニメ
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ユイ - 完結おめでとうございます。不器用なりにも優しさを見せてくれる土方さんにキュンキュンされっぱなしでした、最高です! (2019年10月19日 10時) (レス) id: 7837a845b7 (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - 完結おめでとうございます。とーってもおもしろかったです! (2019年8月10日 18時) (レス) id: a12faa1c0b (このIDを非表示/違反報告)
鳥雫(プロフ) - 良かったですよおおおおおおおお!!!ミツバさんを入れつつ夢主とも恋愛させる、ってのが本当良かったです!!これからも応援してます!! (2018年1月15日 1時) (レス) id: 40fe2f910d (このIDを非表示/違反報告)
ありす - 完結おめでとう!面白かったです! (2017年1月29日 15時) (レス) id: f707c0d1ab (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - 完結おめでとうございます!いつも楽しく読んでもらってました!新作頑張ってください(*^◯^*) (2016年11月13日 12時) (レス) id: 6c50a9e769 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/  
作成日時:2016年11月5日 23時

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