【銀魂】真っ正直姐さん【土方十四郎】

一年の最後　side?? ページ2

【side??】




……そこに、いたのだ。正確にはその先の廊下に。
夜の闇に紛れるようにして佇んでいたその二人だが、俺の目には副長がAさんを引き寄せているように見えた。というか夜の闇にふたりで佇むってその時点でアウトだろ！クロだクロ!!


意図せずに目撃してしまったそのラブシーンはいとも簡単に俺の酔いを奪い去り、代わりに恐怖心を与えた。――このことが二人にバレたら俺は一体どうなるんだ!!?



副長にAさんと言えば屯所内で最も恐れられているふたりだ。副長は仕事の指揮権やら切腹の命令権やらを持ちAさんは隊士の部屋を隅々まで掃除する権利を持つ。特に後者の恐ろしさは言い表しようがない。



……そうして、もしもそのふたりが本当に密かに愛を育んでいたら。――そりゃ嬉しいけど！嬉しいけどその現場を見てしまったことがどちらかに知られれば!!

不吉を極めるシュミレーションの末、俺の頭には自分の名が刻まれた墓石が浮かんだ。どのルートをたどっても結局そこにたどり着いてしまう。死か！死しかないのか!!



ひとり酒も飲まず震える俺へベロベロに寄った仲間が「大丈夫かァ〜？飲め飲め！」とコップを押し付ける。――どうせならここまで酔っときゃよかった！なにも気にせず厠行けてりゃどんなによかったか!!

赤ら顔の中自らの顔だけは白くなっていった。誤魔化すように日本酒を口に運ぶも、酔える気はせず。




(…………とりあえず、殺されませんように。)



そんで早くあのふたりのことが隊士全員に広がって、俺だけがこんな気持ちを抱える状況がなくなりますように。早々に決まった初詣の願い事を心の中で唱えつつ。



「さ、酒は今日はもういいかな俺ァ」



とんでもない光景が一年の最後を飾ったものだ、と、たった今戻ってきた二人を横目で眺めてため息を落としたのだった。

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